「Bisco Fuzz」

Electro Pop
Bisco Fuzz
揺らいで揺らいで絶句、遊びは地の果てまで
忘れもしない。この[Dodidn*]は2012年に立ち上げられ、ポートフォリオの第1作目は、「SLEEPIN」である。この曲は言わば実験曲で、昔、学研の電子ブロックという電子玩具があり、その復刻版の電子ブロックで「1石+IC電子すいみん機」発振回路を作り、コンデンサの充電と放電によるブロッキング発振の“ボツ、ボツ、ボツ…”という音をリズムに見立て、ビートを作ってみた、わけである。結果、ブロッキング発振の音は揺らいで揺らいでリズムが不精確となり、とても音楽的に活用できるものではない、という面白い(?)実験であった。
それと同じ実験をもう一度やってみようという意図だったかどうだったか、いずれにしてもビスコ缶(グリコのお菓子ビスコの缶)の蓋を指で叩いてリズムにしたものの、中途、指先が耐えかねてテンポが崩れ、とんでもないビートになったのだけれど、それはそれで面白いと思ったので、NGとせずOKテイクとした。それが120秒弱の「Bisco Fuzz」である。
そのビスコ缶を即興で叩き、そのリズムを録音し、そこにいくつかのシンセ音を加えて録音し、こうしてどうにかこうにか、とりあえずの曲の体裁が出来上がってみると、「SLEEPIN」が懐かしい、と思うのである。やはり遊びの心は忘れてはならないなと思う。ビスコ缶を使ったフィンガーリズムをもっともっと練習したら、それなりにきちんとしたビートになり得たかも知れないけれど、そんなことをして何になる、と思うのである。
粋な境地というのは、普段手慣れた業や道具で小品を仕上げる極意であると思うのだが、それはどこか、男の痩せ我慢的な、男が男を褒め合う認め合うだけの閉鎖的な気風に思われ、私は最近好かない。気持ちが良くない。古いという気がする。その古さから脱するには、この「Bisco Fuzz」のように脱線(ミステイク)しつつもそれを痕跡として残し、自分が犯した仕業として組み込んでしまうことである。
こうした作者の屁理屈・言い訳を、まともに聞くことなかれ――。それでも尚、音楽をやるって面白いな楽しいな、という部分はある程度分かっていただけるのではないかと思うのである。
【Bisco Fuzz◎特報!】
2018.07.11 | ビスコ缶を楽器に見立ててリズム録り。シンセRoland JD-Xiでダビング。全10トラック。 |
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2018.07.17 | 酷暑の最中、ミキシング。短い尺だからということは関係なく、ビスコ缶の音を調整するのは難しい。 |
2018.07.19 | マスタリング終了。ビスコ缶の音を引き立たせ、全体として少し煌びやかに。 |
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