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Tower of London

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倫敦塔の歴史は英国の歴史を煎じ詰めたものなり。 

 
 夏目漱石ファンとしては、ロンドンの街を一度は訪れなければ、と思いつつ、これを書いている時点でまだ実現していない。ロンドン塔を観、くたくたになるまで大英博物館三昧するというのが私の夢であるが、この旅を実現するきっかけとしてこの曲を作った――のではない。
 ロンドンの街を…と最も具体的に真剣に旅行計画を練ったのは、5年ほど前であろうか。ちょうど日本で蜷川幸雄演出のシェイクスピア劇『ヘンリー六世』が話題になって、どういうわけかシェイクスピアに夢中になるのでもなく、漱石の『倫敦塔・幻影の盾』の新潮文庫を買って読んだ。装幀の安野光雅氏の装画があまり英国らしくなく、“江戸情緒”たっぷりのテムズ河とタワー・ブリッジだったので、なんとなくロンドン行きが削がれた気がして、計画をぱったりやめてしまった。私はそれを、「倫敦塔」における漱石の妄想しすぎる文体のせいだ、とすることにした。
 
 他の芸術作品からインスパイアされて自身の音楽作品に転化あるいは醸造する時、あまり深読みとか凝り過ぎてはいけない、という暗黙のルールを肝に銘じている。いちばんやってはいけないのは、文学作品にインスパイアされて、同じような文体で歌詞を作ってしまうこと。
 漱石の「倫敦塔」にある著者注釈で、“ドラロッシの絵画”というのが出てくるが、そのドラローシュの「レディー・ジェイン・グレイの処刑」なんていうものに惹きつけられてしまうが、やはりこれも深読みと凝り過ぎのたぐいになるので避けた。
 「倫敦塔」にインスパイアされたものの、私が音で表現したのは馬が歩く音、だ。これを20世紀初頭のロンドンの街をさまよう馬車の音、とイメージしていただけたらと思う。音楽は単純が宜しい。


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