
PO-12の特徴
- 単4電池駆動
- ウォッチ&アラーム機能付き
- 16ステップ構成のパターンを16パターン保存可能。
- リズム音色は16種類(バスドラ、スネア、クローズド・ハイハット、オープン・ハイハット、シンセ・スネア、スティック、シンバル、ノイズ、ハンドクラップ、クリック、ロータム、ハイタム、カウベル、ブリップ音、トーン、低音トーン)
- エフェクトも16種類シンセ(艇サンプルレート、ディストーション、ビットクラッシュ、ディレイ、ローパス・フィルター、ローパス・スウィープ、ハイパス・フィルター、ハイパス・スウィープ、スタッター3、スタッター8、リピート8、リピート6、音符のシャッフル、フィードバック、パラメーターLFO、ビブラート)
- パターンの連結可能
- 複数ユニットによるシンク可能
- 3.5mmオーディオ入出力
大まかなパターン打ち込みの流れ
①保存するパターン(No.1-16)を選択。
②1-16のリズム音色を選択。
③パターンの作成。writeキーを押して16のグリッド上に音符を打ち込む。
④別の音色を選択し、同じようにグリッド上に音符を打ち込んでいく。
⑤再生中に音符をパンチインしたり、エフェクトを追加したりできる。また、ノブを使ってサウンドのパラメータを変化させたりもできる。
⑦テンポやスウィング、ボリュームの調整をする。
ゲーム電卓か? ゲーム&ウォッチか? チープ・サウンドの魅力とは?
その昔、秋葉原の電気街でNECのトレーニングキットTK-80に涎を垂らし、80年代前半に任天堂のゲーム&ウォッチの“ファイア”に陶酔、CASIOのゲーム電卓“ボクシング”にはさほど興味は示さなかったものの、NECのPC-6001マイクロ・コンピュータでBASICプログラミングに夢中になった私としては、このTeenage Engineering PO-12 rhythmがこの時代にしては奇抜な態(なり)をしていたとしても、それほど驚きはしなかったのだ。同社の小型シンセOP-1を愛して已まない以上、PO-12 rhythmは素通りすべし、とも思っていた。
しかしよくよくこの態をウェブやら雑誌やらで眺めているうちに、この会社はいったい何を考え、何をビジョンとして目論んでいるのだろうかと、少々興味が湧いてきた。言葉は悪いが普通ではない。そうして実際に現物のポケット・オペレーターに触ってみて、リズムを打ち込んでみて、その興味と謎はいっそう深まっていったのである。いったい何なんでしょう、このPO-12 rhythmは!
まず興味を惹くディスプレイ。ディスプレイでコミカルに“作業”している労働者(作業員)キャラは、スイスかどこかの鉄道員に見える。が、その作業は鉄道ではなく巨大なミシンだ。巨大なミシンで何かを編んでいるのかと思えば、別段編んでいるわけではない。働いて働いて、金属音=リズムを発しているのだ。いったい、この労働者は何者であろうか。
コミカルなディスプレイの動きは、やはりゲーム&ウォッチっぽい。せわしく動き回るミッキーマウスやパラシュート、ドンキーコングといった感じだ。
しかしこちらはあくまで、ゲームではなくリズムマシンである。ひとたびディスプレイのことは忘れて、PO-12 rhythmの独自の入力方法でリズムを打ち込んでいくうち、おそらく初心者でもそれなりのリズム・パターンができるのではないか。かといって、これがOP-1ほど遊べるかと言えば、なかなか微妙なもので、リズムマシンとしては極めて原理的原始的なのだ。
さて、その音色がチープなのである。チープ。三省堂の国語辞典(第七版)で意味を調べてみると、①値段が安い、②いかにも安っぽい、とある。私の主観も加えれば、チープとはショボいとかガラクタ、ということだ。
つまり、チープ・サウンドという特性を付けたところに、このPO-12 rhythmの存在価値がある。ふと日常を見渡してみれば、意外にもチープな物が少なくなってきたことに驚く。せいぜい、バーゲンのTシャツ300円(紙のように硬くてペラペラ)とか、ロシアのトイカメラ(プラスチック製のレンズ)くらいではないか、とも思ってしまう。音楽の世界では、わざわざチープ・サウンドを真似るためにえらく高価なヴィンテージ機器が必要だったりする。それってどこがチープなんだい?
ともかく、なかなかその味わい方がまだ分からないけれども、このチープなサウンドはたいへん貴重だ。ビット・クラッシャーなんて必要ない、もともとチープな音色なのだから。ショボいよね、ガラクタだよね、でもありがたいよね。チープって。