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HOME > EQUIPMENTS > SHURE BETA 57A

マイクロフォンの話①

SHURE BETA 57Aのこと


SHURE BETA 57A■SHURE BETA 57A
・形式:ダイナミック型
・指向特性:スーパーカーディオイド
・再生周波数帯域:50Hz-16kHz
・感度(1kHz):-51dBV/Pa/
2.8mV/Pa
・質量:275g

 1990年代半ば、私が20代の頃。それまでの演劇活動を離脱して、単独で音楽制作をしていた時代の話。

 当時、新進気鋭だったMini Disc形態のMTRを最近買った、というかつての仲間からの相談。――このMTRを使って今、演劇のサントラを制作しているが、ヴォーカル用のマイクが1本欲しい、どんなマイクが良いのか教えてもらいたい――という相談であった。
 その相談内容に関しては、率直かつ適切に答えるつもりで筋書きは頭の中に出来ていた。しかし同時に、自分自身におけるマイクロフォンとの関係、すなわち10代の頃からなんとなく不適切、いやむしろいい加減に扱ってきたヴォーカル録りの概念と技術について、自分を戒める好機ととらえようともしていた。

 つまりそれまで私は、既成曲のデジタルサウンドのドンシャリ、あるいはヴォーカルにおけるエキサイターがかった高域を真似して、カセットテープ式アナログMTRの中で再現したいがため、ヴォーカル用のマイクロフォンはなんとAKGのC451Eを使用していたのだ。中域はふくよかとは言えないが、さすがに高域は伸びてシャープでクリアなヴォーカルではあった。

 ついにその仲間である友人が、先鋒となってデジタルMTRを手に入れたか、というジェラシーの気持ちがあった。
 ATRAC圧縮でサウンドがどのように変化するか、具体的なサウンドを聴いていなかったので、あくまで想像の域を出なかったが、ヘタなダイナミック型マイクを使うとヴォーカルがモッタリすることを危惧して、「SHURE BETA 57A」を薦めた。だが当時、少々それは(若造にとって)高価な代物であった。

 案の定、後日、友人は「SM58」を持参してきた。そしてそれを使ってレコーディングしたヴォーカルを聴くことができた。 結局のところ、高価だった“BETA”は買うことができなかったわけで、比較的安価な「SM58」もあるよと事前に教えていたから、友人は内心早い段階でそちらに飛びついたのだろう。痩せ型の「BETA 57A」など最初から買う気などなかったのかも知れない。

 しかしながら、これがまたいい。ゴッパチサウンドは素晴らしかった。コシのある中高域は聴いていて気持ちが良く、友人には黙っていたが、自分がそれまで実践していたC451Eでのヴォーカル録りより、はるかに活き活きとしていたのだ。

 それを機に私は別のコンデンサー型マイクロフォンを使うようになった。が、なんとなくSHUREマイクについては自分の中で何故か忘れかけた、遠ざかる存在となっていた。
 そしてあれから15年以上経過。あれほど他人に薦めた「SHURE BETA 57A」を自らが買い求め、自分の掌で握り締めてみた。これほどの大御所マイクロフォンが私にとって今ようやく、新しいサウンドとしての発見の喜びをもたらす道具となったとは、実に不思議な縁と思わなければならないのである。

〈了〉
(2012.03.08)