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マイクロフォンの話②
 

ノイマンがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!

 

NEUMANN TLM49
■NEUMANN TLM49
・形式:コンデンサー型
・指向特性:カーディオイド
・再生周波数帯域:20Hz-20kHz
・感度(1kHz):13mV/Pa
・質量:825g

 
 
 
 1987年頃のこと。中学生だった私は、『SOUND & RECORDING MAGAZINE』(リットー・ミュージック社)を貪り読み、マイクロフォンの老舗は“ノイマン”だということを知った。メディアに表出するレコーディングスタジオの風景の中で、いちばん写し出されるのがU87だということも併せて、神通力をもったこの確かな情報は、私の胸の内に駆け巡る音への愛着を伸張させ、増幅させていった。
 それからまもないある日、この(当時)西ドイツにあるノイマン社の国内代理店である河村電気研究所から、コンデンサー・マイクロフォンのカタログを夢中になって取り寄せた。まさに生意気な中学生が殿中を土足で踏み歩くような畏れ多い行為であった。
 
 それは“fet 80”シリーズのカタログであったが、U87iの写真の右隣に一際目立つ「U47 fet i」のモノクローム写真があって、私は意味もなくそれを欲した。
 まず何より、その鈍い銀色の光沢の美しさとカプセルの大きさに惹かれた。この視覚に投影される堅牢なボディは品格があり、工芸の極みだ。マイクロフォンの中央に記されたカーディオイドの記号は湾曲したハート型で愛らしく、その下方には堂々たるノイマン社のロゴが刻印されていた。そしてさらに、「U47 fet i」の紹介文の冒頭がまたノイマン社らしい古風と雅を感じさせた。
 
《U47 fet iマイクは1947から1960年にかけて製造された世界的に有名なマイクU47の後継となるものです。これは世界中の録音・放送産業界に革命的な信頼を与えてきています》
 
 ――この中学生時代の記憶から、いま私が手にした「TLM49」への個人的記憶の推移と、マイクロフォン自身が歩んできた技術的伝統の歴史とが、無論、連結するわけもない。しかし、あのカタログで見た、大きなダイアフラムを抱えたカプセル(K47)は間違いなく現物としてここに在って、鈍い銀色の光沢もカタログの中のままである。
 
 これを白昼夢と言わずして何と言おう。
 
 そうであった。中学生だった私は、ファンタム電源とサスペンションの必要性も知らず、ただこれらのマイクロフォンに憧れただけであったが、河村電気研究所かあるいは別の何かによって、これらが大変高価な手の出ない道具であることを知り、灯されない部屋の片隅で、ひっそりと涙したような気がする。そんな記憶が、あるような気がする。
 
 私はこれらの個人的な思い出が、まったく無意味であったとは思えない。
 信頼のおける音を探り当てていこうとすると、そこには必ずノイマンがある。それは私にとってあのモノクロームの写真の、「U47 fet i」の影像である。切り離して考えることができない。
 
 さてこのマイクロフォンと、これからどんな思い出を紡ぎ編んでいこうか。

〈了〉
(2012.04.19)

§ Equipments Column


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