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マイクロフォンの話③

マイ・フェイバリット―M81


TELEFUNKEN M81■TELEFUNKEN M81
・形式:ダイナミック型
・指向特性:カーディオイド
・再生周波数帯域:30Hz-18kHz
・出力インピーダンス:200Ω
・質量:371g


 歌はヴォーカリストのキャリアによって加齢を伴う。《歌詞》という言葉の障壁は、時に歌い手の心を和ませ、時に心を揺さぶる。若い頃はすらりと素通りしていた一節が、加齢を伴ってその深みを知り、知ってしまった以上、それは声となって表現される。いかなるジャンルの歌であっても、歌い手と歌は絶えず変容の中で表現され、ただの歌ではなくなってしまう。

 この歌い手と歌との長い付き合いの関係において、極めて重要な任務を任されているのが、マイクロフォンである。その際、基本的にコンデンサーマイクはスタジオで扱われる“裏方さん”であるが、ダイナミックマイクはステージでその姿が露わになるため、裏方というより“黒子”に近く、歌い手はこの存在に無知でいられない。

 裏方に徹している限りでは、マイクロフォンの見栄えなど関係なく、性質と性能だけを重視すれば良いが、ステージ上のマイクロフォンは見栄えがある面で演出となる場合があり、煌びやかなスパンコールのドレスに包まれた女性ヴォーカリストが、真っ黒なSM57などを手にしていたら不気味不格好であるし、マイクロフォンの性質・性能に加え、デザインが求められるのはやむを得ないことなのだ。

 こういったことにおいて、私も自分の、(演出も含めた)マイ・フェイバリット・マイクを何本かに絞っておきたい、という希望があった。そのうちの1本が、「TELEFUNKEN M81」である。

 自らのヴォーカルを解析した時、20代の頃よりも声質が透明になって、ピーク成分が増した。アタックが比較的硬質で、なおかつ低音に微妙なニュアンスが含まれる。となると、ある程度コンデンサーマイクの特性に寄ったものを選びたい、ということで先のマイクロフォンが選ばれた。

 「TELEFUNKEN M81」は中高域に緩やかな伸びが感じられるが、中低域と高域は逆におとなしめである。従って、あまり激しい歌い方をしないヴォーカリストには、ピンとくるものがないかも知れない。私にとっては、きついピークをコンプレッションしたときの叩かれ感が、美麗に整っていて欲しいと思っているので、その特性が合っているM81はぴたりとはまるものがあった。

 ただ一つこのマイクの欠点は、重いことである。楽器系には無関係なことだが、女性ヴォーカリストの手持ちには些か難がある。例えばBETA 57Aが275gであるのに対し、M81は371gとほぼ100gも重い。クロームのボディが堅牢なせいであるが、男性でもこの重さは苦手だと思うヴォーカリストは少なからずいるだろう。私自身も、この重さに耐えうるだけの腕の筋力は保っていたいと真剣に考える。その一方で、重たければ重たいほど、歌に込める精力が研ぎ澄まされていくようにも感じるのだ。

〈了〉
(2012.09.20)