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マイクロフォンの話⑨
 

LT-321―しっとりとした存在感

 

LT-321 Horizon
■LAUTEN AUDIO LT-321 Horizon
・形式:コンデンサー型
・指向特性:カーディオイド
・再生周波数帯域:20Hz-20kHz
・出力インピーダンス:200Ω
・感度:32mV/Pa OR -30±2dB (0dB=1V/h2a 1000Hz)
・質量:658g

 
 LAUTEN AUDIOのLT-321 Horizon。メーカー・サイトの画像で見た限りでは、ボディがほっそりとした感じで弱々しく見え、本当にチューブなのか? と不安に思ったが、実際に手に取ってみるとよく分かった。ボディは真鍮製で堅牢。太さも61mmと太くてそれなりに重い。ダイアフラムも大きめで頑丈な造りになっている。カタログによる正式な仕様は、“真空管回路”の“圧力傾度コンデンサー・マイク”である。
 
 所有する真空管マイク、RODE NTKは明るめの音色で派手さがあるが、こちらのLT-321のサウンドはどちらかというと地味である。しかし、一聴しただけではその良さは分からない。一言で言ってこれは極旨のマイクロフォンなのだ。
 太さと柔らかさを醸し、濃厚な中域と合わさって粒の揃った高域のプレゼンスを引き出す。それらの配合が大雑把にならず滑らかで、ストイックなほど熟成されたサウンドである。なるほど、噂に聞いていたNEUMANN U67サウンドに近い。
 
 10万前後の価格帯で、生音をこれほど味わい深くしてくれる真空管マイクはなかなか無いのではないか。ヴォーカルを録ってみると分かるのだが、語尾における整い方は驚くほど美しい。その部分だけで比べると、他のマイクロフォンは痩せてざらついて、語尾が汚くなってしまう傾向がある。LT-321はそうならない。おそらくどんな音源でも極上のサウンドになるだろうが、やはりヴォーカル・レコーディングには是非薦めたいマイクロフォンだ。
 
 デジタル・レコーディングではもちろん問題ないが、かつての時代のようにテープレコーダーを使ってのアナログ・レコーディングをすれば、さらに味のあるサウンドが表現できるのではないかと思った。真空管マイクでは気になるノイズも心配する必要がない。
 
 とどのつまり、私のヴォーカル・レコーディングの筆頭マイクロフォンと躍り出た感である。LT-321はお薦めのマイクロフォンだが、正直、人に教えたくない。いっそのこと、生産終了となってくれた方が、精神衛生上、都合がいい。

〈了〉
(2013.10.08)

§ Equipments Column


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