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4.「まとめる」の行程

 ここまでの作業でほぼすべてのミキシングが終わっています。
 ただ、マスター・トラックでもう一手間かけてやるべきことがあります。マスター・トラックのフェーダーの、オートメーションの書き出しです。
 私が注意しておこなっているのは、曲が終わった後の、フェード・アウト処理。緩やかなフェード・アウトをする曲、速いフェード・アウトをする曲。ジャンと鳴って終わる曲。曲によってアウトロのかたちは様々です。曲の終わり方に応じて、フェード・アウトの処理の仕方を変えるわけです。

❽フェード・アウトの処理
 まず、ジャンと鳴って終わる曲の場合。「はにかむバルテュス」はこの部類になります。
 「はにかむバルテュス」のアウトロ、つまりジャンと鳴った後に、少しばかり残響が続くのが分かるでしょうか。
約3秒ほど残響が続いて消えます。ほとんど消え始めた瞬間から、フェーダーを速く落とし、そこをこの曲の“オシリ”としています。オートメーション機能を使って、手動でフェーダーを落としています。
 ただしこの曲の場合、プリ・マスタリングの段階でも自動的なフェード・アウトの処理をしているので、この行程でおこなったとされるフェード・アウトの処理を耳で聴いて確認することは難しいでしょう。ただ大事なことは、ミックス・ファイルのバウンス書き出しをする前に、きちんとフェード・アウト処理をしておくと、プリ・マスタリングの作業がしやすくなります。

 もっと緩やかにフェード・アウトするような曲の場合、自動処理では聴感上、徐々に聴こえなくなる流れが美しくなく、やはり手動で落とすか、オートメーションで記録したデータを編集するしかありません。
 一定の速度でフェーダーを落とす(音のレベルを下げていく)より、ある一点まで落とし、その一点から急激に落とす、あるいはもっと緩やかに落とす、などの技があります。消える瞬間にかろうじてどのパートのどの音が聴こえているかに合わせて、フェーダーを落とすタイミングを計算することもあり、いずれにしてもフェード・アウトというのは奥深いものなのです。
 S/N比が今よりも悪かった、アナログ・テープを使ってマスターを作っていた時代においては、顕著にその処理部分が聴こえてしまうので、丁寧な処理を施す必要があったのです。フェード・アウトの達人、職人芸的な触れ込みをされるミキシング・エンジニアがいたほどです。

❾ミックス・ファイルの書き出し
 フェード・アウトの処理が終わったら、最終的なミックス・ファイルを書き出しします。ファイナル・バウンスです。
 書き出しされるファイルは通常、最前列のクリップの頭から、最後列のクリップの尻までですが、ジャンと鳴って残響が続く場合、既にクリップの音は終わってしまっているので、残響の部分は書き出されずに途切れた状態で書き出されてしまいます。先のフェード・アウト処理をした箇所まで含まれるよう、書き出し範囲を指定した上でバウンスすることが大切です。
ミックス・ファイルは録音フォーマットと同じ値で書き出しします。「はにかむバルテュス」の場合は、32bit浮動小数点/96kHzのWAVファイルです。これがミックスのマスター・ファイルとなります。Pro Toolsでは、オフライン書き出しとか、どのトラックを書き出しするかとか、MP3ファイルも同時に書き出しするか、などの選択が可能ですが、それについてはここでは割愛します。

★ミキシングのすべての行程を終えて

 このミックス・ファイルを試聴してみて、納得できたらプリ・マスタリングの行程へ、納得できなければミキシングのいずれかの行程をやり直しします。EQの値をわずかにいじる、エフェクトの設定を少しだけ変える、ということはしょっちゅうあることで、たった1回のミキシングで納得できる、というケースはほとんどありません。何度もやり直して納得のいくミックス・ファイルを作って下さい。

 プリ・マスタリングの行程では、再生するメディアを前提に、さらに全体のサウンドを調整・補整します。「はにかむバルテュス」はCDフォーマットと同等の16bit/44.1kHzで聴いてもらうよう、プリ・マスタリングでいくつかの調整を施してダウン・コンバートしています(以下のクラウド・プレイヤーで聴けるサウンドがそうです)。

 ファイルを書き出し、曲が完成したら、すべての作業ファイルを確実にパックアップして下さい。メモ、整理、保存、バックアップ。これは現代の音楽制作において怠ってはならない4つです。その作業の痕跡や履歴が残っていたら、あとあとの技術の修練に役立ちます。あの音はどうやって出したのだろう、ということが作業ファイルを開くことで、あるいはメモを見ることで分かります。

 音楽を聴く以外に、野山や海などの自然や、街の雑踏のノイズを聴いたりして、ミキシングのヒントになることがあります。風や雨、虫や動物、花々の香りや色、人々のざわめき、車が通る音、電車が通る音。視覚を伴った時の音、目をつぶって聴いた時の音。とにかくいろいろな物音や雑音に関心を持つこと。

 そしてできれば、何度もこの「宅録しませう」を読んでいただいて、ミキシングについて哲学的、物理的、音楽的、音響的な思索の足しになれば、幸いです。
 でも何より、考えるより行動。「やってみる」ということを優先に。心の中に咲く花を、忘れずに。

〈了〉

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