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コラム/
浮遊―透明なパンツ、透明な歌声

  

夏にかけての瓦解、心理的崩落

  アルバム『Gの洗礼』のプロダクトは難儀を極めた。頭の中で塗り固められていた施策がいったん崩壊し、心理的空中分解に至った要因は、たった一つの出来事によるものなのかも知れない。それは突然のアクシデントとも言っていい、“harassment”であった。
 しかし、プロダクトは、なんとか修復を図らなければならなかった。断続的な修復と軌道修正――。プログラミングの際のメトロノームのトーンが頭を悩ませ、コード進行も音数も稼げない最悪の状態から、打破しなければならなかった。もつれた糸をほどき、それを修復するに至るには、何たる時間の浪費が必要であったか。それをと思うと、不可抗力とは言え、やるせない気持ちになる。
 2018年の春から夏にかけて、「健脚ブリーフ」の制作期間中から、不運なる試練が訪れる。そこに計画していたヴォーカルを入れることができなかったことが、最も悔やまれる。不条理な“harassment”によって心がズタズタに引き裂かれ、元の落ち着いた心理状態に戻るまで、えらく時間を要した。私はいま、「健脚ブリーフ」のプロダクトを振り返り、新たなアルバム制作への意欲を高めようとした。これがもつれた糸をほどく効果となるだろうか。耳元にあざやかな音が紡がれるまで、こうして語る以外に方法はなかった。
 

「健脚ブリーフ」という審美的なポエトリー

  1年前の2017年に企画された“ブリーフマン”からタイトルを変更し、「健脚ブリーフ」となったこの曲のジャケットのビジュアルを制作すべく、ほぼ数ヵ月にわたり、似つかわしい“ボクブリ”を探すのにたいへん苦労した。いくつかのパンツを入手し、撮影もおこなった。曲のレコーディングがおこなわれ、イメージががっちりと固まってしまった頃には、これらのパンツがイメージにそぐわないことが明らかとなり、また別の“ボクブリ”を探すこととなった。最終的にイメージどおりのOne Novaの“透明なパンツ”に行き着いたのは、奇跡に近い幸運であった。

One Novaのパンツでジャケット撮影

 フランス画家フレデリック・バジール(Frédéric Bazille)の油彩画「夏の情景」(Scène d'été)が描かれたのは、1869年である。ここにあらわれた夏の水辺の青年達の色彩豊かな“下着”を見れば、デザインとして現代のそれと何ら遜色ないことが分かるだろう。青と白、黒と黄色の縞柄のパンツ。日本では明治天皇が東京奠都で東京に訪れた頃となろうが、まったく驚きをもってこの画を見たのである。陽射しで明るくなった中央の部分には、二人の青年が何やらじゃれ合っている。そこに見える背後の青年の、淡紅色のパンツが、One Novaの“透明なパンツ”で甦ったと私は確信した。当初のテーマ“草食系男子に捧げる応援歌”の面目躍如とも思われ、あの画の「夏の情景」はそのままそっくり、「健脚ブリーフ」に投影されたのであった(夏祭りの盆踊りというコンセプトに置き換わったけれど)。
 

《対話》の歌として

  「健脚ブリーフ」が仕上がりつつある最中、重ね重ね検討してきたヴォーカルの、歌唱の問題を片付け、それが一つの着地点に辿り着いたのは、2018年の9月のことである。
 私が理想とするヴォーカルは、決して“彫刻の造形物”ではないというところでの、自然な日常的な《対話》の歌としての真髄を目指したものであり、過去、空々しく夢想的な歌い方をしていた自分のヴォーカルのスタイルを、根本から見直すに至った。
 夢想では、抱いた気持ちがただ空中に漂うだけで、その歌われているポエジーを相手の心に響かせることができない。一種、このことに関しては長年、諦念の趣を抱いていたのであるが、今度ははっきりと、そこから脱却しようと画策したのである。
 すなわち、目の前にいる人物に、肩を掴んででもこちらに振り向かせ、直接言葉を投げかける、あるいは《対話》をするという強い積極的な姿勢。言わば、文明人としての言葉のやりとりを歌という形で試みるのだ。言葉が足らなければ、言葉に加えて手振り身振りで伝えよ。自分の思いを。胸の内を。俯いて呟くのではなく、当人の前で堂々と。AhhとかWooのプリミティヴな単純言語の呼応は、文明人としてのそれを超えた、延長線上にあるのだ。
 

《対話》という歌の境地へ

 
 いずれにしても《対話》こそが「私の歌」である。そういう強い意志を信念とすること。リズムを基調とした曲に付随するメロディの実存性は、ヴォーカルがそれに置き換わることによって、劇的に文明的な文化的な営みを露わにする。
 そうしているうちに、私の歌声は変化をみせた。声質は以前より柔和になり、プリミティヴとなり、より抑揚のシンコペーションがカオスと化し、荒野の如く変幻していった。つまり《浮遊》するのである。そうして熟された透明な歌声が、私の最大のポテンシャルとなった。新たな歌の世界が、広がった。
〈了〉
(2018.10.09)

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