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【ザミラ株式会社さんから届いた赤い封筒。中身は謎めいた赤いパンツ】 |
思いがけずパンツの話をしたい。
今年の春から夏にかけて、「健脚ブリーフ」なんていうエレクトロ的解釈で盆踊り風? の曲を作ったのがきっかけとなり、実際にパンツを穿いてアートワークに励む、といった作業を経験する中で、あらためて下着=パンツって奥が深いなと思ったりした。
パンツとは、本当に奥が深いのだ。健康面とデザインと履き心地の研究、及びそれらの絶妙なマルチプリケーションによって、人間にとってなくてはならぬ生活上の必需品=パンツというものを、世界中のメーカーが日々努力を重ねて開発しているのだと思い知る。個人的な感覚においての“パンツへの思い”=“パンツ愛”を総ざらいすることにもつながり、パンツについて考えるとは、実に面白い試みでもあり、人類学的サブカルだとも実感した。
そうして「健脚ブリーフ」が完成し、一息ついて〈できうるなら第2弾でも後々作りたいなあ〉とコーヒーを飲みながらぼやいたのも束の間、なんだか突然、そういう機会がリアルにやって来た。まことに事の流れは急速である。
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【11月10日付朝日新聞夕刊の記事】 |
偶然ながら目に付いたのは、今月10日付の朝日新聞夕刊の記事であった。「過疎の町『赤パン』でエネルギー」。宮城県丸森町の町おこしの一環で、二人の若者(高野真一さんと豊田拓弥さん)が起業して男性用の赤パンツを販売しているという話。これがちょっと変わったボクサーパンツなのである。
伸縮性のある生地で、フリーサイズ。色は真っ赤。それだけではなく、穿くのに前と後ろの区別がない。これにはちょっと驚いた。ウエストのゴムもなく、体を締め付けないと、ホームページには記されている。
製作したのは、丸森町で会社を設立したザミラ株式会社(代表取締役は高野真一さん)。何やら記事を読むと、この赤パンには、股の内側に奇妙な文字のプリントが施されているのだという。ラテン語の「memento mori」。上下を反転させれば、その文字が「memento vivere」に。日本語に訳すと、“死を想う”が“生を想う”になる――? いったい何なんだ、この赤パンは――。
私はすっかり、この赤パンの謎めいたコンセプトに惚れ込んで、一つ買ってみることにしたのだった。
本音を言うと、もう既にこの記事を読んだ直後に「健脚ブリーフ」の第2弾はこれだ! と決めていたのである。が、実物が届いてみないことには、何ともし難く、その企画制作は立ち上げられないので、その間にいろいろと想像を膨らませてみたりした。Googleマップで宮城県の丸森町を示してみれば、どういった土地であるかはなんとなく分かったものの、そこで若い彼らが、いったいどんな生活をしているのかとか、何故この赤パンに、ラテン語の「memento mori」がプリントされているのか、といったこととか、他にもいろいろと、悶々とした想像。パンツ一つでこれだけ想像できるとは、かつてなかったかも知れない。
そうこうしているうちに、あっけなくパンツが届いたのである。開けてみると、本当に真っ赤であった。この深い赤の色も、なかなか意味がありそうだ。そしてパンツの見た目はやはり、前と後ろの区別がない。実に不思議であった。
ところで、例のあのラテン語のプリントは――。後日、実際にこの赤パンを穿いてみるまで、その表示にまったく気がつかなかったのである。それは、前代未聞の「memento mori」であった。まったく意外なところに、それはプリントされていたのだった。この話は続く――。
追記:ザミラ社では2024年12月現在、赤いパンツのネット販売をしていないようです。
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