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マイクロフォンの話⑦
 

M82―ひどいドラムサウンドの経験値から

 

TELEFUNKEN M82
■TELEFUNKEN M82
・形式:ダイナミック型
・指向特性:スーパーカーディオイド
・再生周波数帯域:25Hz-18kHz
・出力インピーダンス:300Ω
・感度(1.85mV/Pa):-54.6dBV
・質量:635g

 
「なあ、俺らのバンドを録ってくれよ」
 そんなふうに言われて、ポータブルのDATレコーダーとステレオマイクを持参して、のこのことやってきたのは、周囲が田畑だらけの、農機具を保管する離れの倉庫であった。其所はバンドメンバーの一人の実家で、ここで我らがロックバンドの演奏を同録しろ、というのである。そんなことがあったのはもう20年以上前、私が20歳をほんの少し越えた頃のことだ。
 
 さすがにその倉庫ですべての演奏を同録することは不可能で、私はバンドリーダーにドラムパートだけ録らせて欲しいと提案した。どこかの電力会社の配電盤に鼠が侵入、という奇天烈な環境と似ていて、その倉庫に置かれていたドラムセットのバスドラムには、もしかすると普段は、鼠が棲んでいるのではないかと思われた。
 ド、ド、ドといったような気の利いたサウンドは、その鼠巣からは鳴らず、パスン、パスンと信じられないような鳴りであったが、何とかその場を切り抜け、後日補正に補正を重ねてバスドラらしいサウンドに仕立てた。
 
 ELECTRO VOICE RE20やSENNHEISER MD421のようなマイクロフォンとは、絶対に縁がないと思っていたのに、目の前に「TELEFUNKEN M82」がある。これはそういう系統のマイクロフォンである。そういう系統とは、がっつり系のマイクロフォンということである。ボトムエンドが伸びた音圧の高い音源に有効なマイクロフォンであり、指向性も鋭い。
 見た目はどこから見てもコンデンサー型にしか見えないが、あくまでダイナミック型、ムービングコイルである。軸上にマイクを向けなければならず、垂直側は感度に乏しくなる。2つのスイッチを駆使して、4つのサウンドが得られる。だから前者のマイク達よりも、利便性が高い。
 
 ああ、当時こんなようなマイクロフォンがあったらなあ、と思った。パスンパスンが、もうちょっとバスンバスンと録れたかも知れなかった。ギターにも、ヴォーカルにも使える。ロックバンドにはもってこいのM82だ。

〈了〉
(2013.08.07)

§ Equipments Column


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