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実験コーナー/
QY-700の音を探る簡易レコーディングテスト

 
 

実験結果の総評

 
■カセットテープ式のMTR
 確かに、私にとって、90年代前期から中期にかけての音楽制作は、カセットテープ(アナログテープ)式MTRの大全盛時代であった。そうした古いテープを近頃再生することはあっても、録音まではさすがにしなかったのだが、今回の実験でおよそ10数年ぶりにRECボタンのランプを点灯させたのである。
 

“タンバリン”と書かれたカセットテープ

 すっかり忘れかけていたのが、テープスピードによる録音可能時間のこと。9.5cm/secでの稼働では、46分テープの場合、片面23分の、さらに2分の1(倍速のため)→11.5分が録音可能時間。短い曲によっては2曲レコーディングできるが、5分以上の曲となると1曲が限度である。私が頻繁に使っていたのは、AXIAのカセットテープで、過酷なテープ再生に耐えられる安定感があった。尚、私はテープの消耗劣化を最小限に収めるために、敢えて46分テープ以外は使わなかった。無論、「ハイポジション」である。
 
 今回のテストレコーディングの際、「TASCAM PORTA STUDIO 464」が古いため、ピッチが瞬間的に狂うことがあった。また細かな部品のメンテナンスが行き届いておらず、連続的に、あるいは長期的にこの機材を使い続け、このアナログテープの効果を得ることは難しいとも思えた。
 そうは言っても、テープリミッティングの独特のサウンドは捨てがたいものがある。時代を感じさせつつも、そうしたサウンドをエフェクトとして味付けする分には、十分に使える機材だと思えた。今となっては――というより「Pro Tools」を前にしては――カセットテープをレコーディングの手段で扱うのは非常に煩わしい、と感じるのも事実であるが。
 
■楽器音源のリアリズムとは何か
 さて、実験結果について。
 ラモーの「タンブラン」をピアノソロでMIDI演奏し、リバーブ以外の加工を施していない「QY-700」&アナログMTRサウンドの場合、アナログテープのテープリミッター効果を聴感する以前に、音源そのものがまるでリミッターがかけられているかのようなサウンドであることに気づく。
 私は当時、このYAMAHAが意図したアコースティックピアノ音源のサウンドが大嫌いであった。アタックにパワーがなく、目の前で鳴っているという感じがしない。つまり奥行き感の前後の空間表現がとても難しい。内部エフェクトのリバーブも極めて地味で、あまり空気感のヌケを感じない。音源にアタックのパワーがないから、残響もコバンザメのように不合理にまとわりついているだけ、といった感じである。
 
 そもそも「QY-700」内の音源のうち、アコースティック系の音源はほとんどこうしたエッジの無い抑制されたサウンドをしていた。豊富な音源が揃えられているから、いろいろなスタイルの音楽が作れるかと言えば、サウンド的にはかなり限界が感じられた。
 例を挙げれば、ピアニッシモで鳴らした音源を、フェーダーを上げて品良く倍音を響かせるといった“耳元で小さな音を聴く”ミニマム的なサウンドを得ることがまったくできなかった。「音楽」を作るとはどういうことなのか、ということを痛感した苦い経験である。
 
 しかも当時は、個人的な手持ち機材の問題で、オケ全体をまとめてEQ&コンプ処理するしか手段がなかった。つまり、音源を個別にEQ&コンプ処理することは無理だったのだ。しかしながら、こうしたYAMAHA音源のピーク成分の乏しさ、エッジの無さが、皮肉にもトータルコンプ無しでも十分柔らかく抑えられたようなサウンドになり、“無処理”でまとまり感を得られる好結果となっていた。
 
■デジタルサウンドの違いと進化
 1990年代に私が使用していたマスターレコーダーは「KENWOOD DX-7」というポータブルのDATだった。いま考えれば非常に使いづらい廉価なレコーダーであったが、マイクロフォンを繋げて野外に出ればサウンドスケープを録ることもでき、デジタル入出力端子を装備していたので当然マスターレコーダーとしても活躍した。約10年はこのDATを使い倒したことになる。
 
 今回の「QY-700」のサウンドは最終的にPro Toolsに取り込まれているため、当時に比べて質が高く、柔らかめのデジタルサウンドになっていることは否めない。当時は16bit/48kHzでかなり硬め、高域にざらつき感があった。従ってヴォーカル・レコーディングではチューブプリアンプを通して、ようやく丸みを帯びたサウンドを得ることができた。
 こうしたことでアナログMTR使用時代に蓄積されたサウンド作りのノウハウが、「KORG D8」に切り替えた途端、すべて覆ってしまい、デジタルサウンドについては根本から考え直さなければならなかった。
 
 

「QY-70と700の時代」

 
■QY-70
 千駄ヶ谷のプロダクションでヴォーカルレッスンをこなしていた頃。1997年――。私は電車の中でも使えるようにと、小さな巾着袋を拵え、それにシーケンサー「QY-70」を入れて持ち歩いていた。
 後にラップトップ型の「QY-700」に買い換えるのだが、まだその頃はQY-70だけだったため、メモリがフルになった時点で友人所有の「QY-700」のフロッピーディスクにバックアップをしてもらうべく、わざわざ自宅に来てもらい、私の「QY-70」と友人の「QY-700」をMIDIケーブルで繋ぎ、データを移送したりしていた。そもそもQY-70の電源アダプタも別売となっていて、あの頃は町の小さな楽器店で取り寄せてもらったりしていた。楽器の売買は雑誌の通販を電話か直接出向いて利用。モバイル端末を使って私がインターネットを利用し始めたのは、もっと後のことである。
 
 QY-70の音源は多岐にわたっていたが、音のクオリティは「中の中」あるいは「中の上」といったところ。豊富な種類の楽器をリアルに再現するというコンセプトであったかどうかは思い出せないが、様々な音楽ジャンルに対応し、どこでも簡単に作曲することが出来るオールインワンのモバイル系、であったことは間違いない。
 
■QY-700でレコーディングした時代
 「QY-700」に買い換えた以後、1999年頃の自宅スタジオで行っていたレコーディングは、だいたい次のようなやり方であった。
 「QY-700」でオケを打ち込む。シーケンサー内部で入念にミキシングしたその2ch音源を、KORGの8トラックデジタルMTR「D8」で内部エフェクトのコンプをかけながらダイレクトに録る。そして残りの6トラックにはヴォーカルやコーラスをオーバーダビングする。
 
 「D8」は内部処理は24bitであるものの、入出力は16bit/44.1kHzのみで、それまで所有していた「TASCAM MIDI STUDIO 644」と比べてまるでサウンドが違っていた。音の一つ一つが剥き出しとなり、しかもそれぞれに隙間ができた感じがして平坦、密度が薄い。ともかく音楽としては聴き苦しかった。
 結局、わずか2年ほどでROLANDの「VS-890」に買い換えるのだが、レコーディングの基本的なルーティングは変わらなかった。「QY-700」内でエフェクトを含めたミキシングが可能、というのがかなり有益に働いて、音源をわざわざデジタルMTRにマルチで録ることはせず、8トラックという限られた枠をいかに合理的に使うかが重要であったから、以上のようなやり方を踏襲していたのだ。

〈了〉
(2011.09.01)

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