マイクロフォンの話⑪
古き良き時代の薫り―Peluso 22 47
ヴォーカリストにとって憧れのマイクロフォンと言えば、NEUMANN U47であろう。私はこのマイクロフォンの音色を確かめる時、必ずと言っていいほど、エラ・フィッツジェラルドのアルバムを引っ張り出してくる。どうやったらこんな柔らかい音になるのだろうと、RODE NT1を使って実験めいたことをやって遊んだのは、20代の頃だ。そう、河村電気研究所のカタログでU47 fet iを見て興奮したのは、もっと前の中学生の頃だった。
このPeluso 22 47が、CE-6072Aという3極管の真空管ながら、U47に近いという評判を聞いて、私は飛びついた。もう既に自身のヴォーカルが、あの柔らかみのある音色を不可欠なものと要求していたからだ。Peluso 22 47がその役割を果たしてくれるのならば、と思ったのである。
U67と極似と称されるLAUTEN AUDIOのLT-321 Horizonもそうなのだが、録りでの軽いコンプレッションで録り音を聴いたのでは、その良さが分からないというか、柔らかみはあまり引き立たない。この録り音に、アタックを利かせた設定のコンプでゲインを上げた時、これらのマイクロフォンの真の姿が浮かび上がってくる。
Peluso 22 47の場合、おそらく適度なローカットさえ施せば、高域の処理は必要ないであろう。それぐらい、柔らかみのあるトップエンドのプレゼンスを聴くことができる。
これはきわめて現代的ではない。古き良き時代の音色である。これをもしヴォーカルに使用するのであれば、オケを相当作り込まなければバランスが取れない。いや作り込むというより、洗練させなければならぬ。そう、アナログらしく。困ったマイクロフォンだ。
どうやらレコーディングの現場に、琥珀色の飲み物が必要らしい。そう冗談を言いたくなるくらい、Peluso 22 47はアダルトなマイクロフォンである。夜な夜な、酒場へ向かうPeluso 22 47を、私は見てみたい。
§ Equipments Column