マイクロフォンの話⑯最終回
FC-357―行き着けば饒舌
LAUTEN AUDIO FC-357 Clarion。私が所有するNEUMANN TLM49が825gで最も大きく重たかったが、それよりも重量感がある。とにかく図体の大きいマイクロフォンである。
中学生時代にNEUMANN U47 fet iのカタログで知って以来、ソリッド・ステートFET回路のマイクロフォンに漠然と憧れ続けた。このFC-357 Clarionは見た目、それをうまく連想させてくれる。
さてそのサウンドは――。これがまた絶妙なバランス感覚なのである。感度は最近のマイクロフォンの傾向としては比較的低い方だが、ナチュラルかつ繊細に源音を拾う。しかしどこか、なめらかだ。低域から中域成分にかけて適度にクローズアップさせ、ほんの僅か高域の明るさが感じられるが、派手ではなく落ち着いている。絹目のようななめらかさ。これは言わば、搾りたて新鮮な牛乳で拵えた、きめ細かなソフトクリームといった味わいではないか。
そう、乳製品というのはどんな料理にもよく合うが、このマイクロフォンはそうしたalmightyでstandardな位置づけが似合う。かつてNEUMANN U87Aiがそうであったように。ヴォーカルはもちろん、どんな楽器でもそれぞれのパッションを引き出してくれそう。
そして良質なマイクロフォンの特徴というのは、その源音をとらえたアタックと尻のかたちが綺麗に整っていて崩れていないこと。周波数特性的には素晴らしいのに、こういった繊細さの欠けた(綺麗にかたちが整わない)マイクロフォンが案外多く出回っていたりする。LAUTEN AUDIOのマイクロフォン全般に言えるのは、その点で確実に信頼がおけるということだ。
すなわちFC-357 Clarionは、メーカー側の本気度が伝わってくる逸品。プロが好んで使いたいと思えるようなマイクロフォン。そうでなければ、こんな絶妙なバランス感覚は生まれないのである。
§ Equipments Column