※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2010年11月17日付「学校の広告」より)。
古い雑誌などを必要に応じて収集している際、偶然ながら「千代田工科芸術専門学校」の広告に目が止まる。少なくともこうした広告で学校名を覚え、高校の進路指導の分厚い資料で改めて学校の情報を得る――というようなかたちを経て私はここを入学したことになる。
古い広告自体にも味わいがあるが、かつて専門学校系の広告は特に味わい深いものがあった。「インターネットの無かった時代」というのを必ず枕詞にしなければ、こうした広告の性質は、なかなか理解されないかもしれない。
さて、もう一つの意味合いとしては、千代田工科芸術専門学校の情報をできるだけ手元に置いておきたい、というのがある。
いちばん基本的なことで言えば、この学校でどれだけの課程科目があったか、私はすっかり記憶の片隅すらも忘却していた。こういった失われた記憶の部分を、残存している情報源から断片的に取り戻すことで、自分が卒業した母校の全体像を留めておこうとする試みである。
「千代田テレビ電子学校」時代の広告
あるカメラ雑誌にあった千代田の広告なのだが、学校名が「千代田テレビ電子学校」となっている。非常に古い雑誌なので学校名も旧名である。
学園の沿革を調べてみると、1964年にまず「千代田テレビ技術学校」として上野に1号館が完成する。そして1972年に「千代田テレビ電子学校」と改名。1980年には「千代田工科芸術専門学校」となるから、72年から80年の間の広告であることがわかる。その当時の専攻科目を抜粋してみる。
○放送芸術科
・テレビ専攻
・ラジオ専攻
○演劇文芸科
・演劇専攻
・文芸専攻
・ジャーナル専攻
○映画芸術科
・テレビ映画専攻
・CM専攻
・ドキュメンタリー専攻
・アニメーション専攻
・劇映画専攻
ちなみに、広告の中の教授陣に記されてある、「作家=秋吉茂」氏は私が在籍していた当時(1991~93年)でも現役の講師で、私も秋吉先生のジャーナリズムの聴講を受けていた。
雑誌『FMレコパル』の中の広告
たまたま入手した1986年の『FMレコパル』(No.3関東版)にも学校の広告があった。当然、学校名は「千代田工科芸術専門学校」となっていて、おそらく私はこの頃の広告を度々“拾い見”していたに違いない。専攻科目もだいぶ増えていることがわかる。
○〈工業専門課程〉コンピュータ情報処理
・ソフトウェア科
・高度情報処理科
・情報電子工学科
・情報システム研究科
・女子情報処理科
・プログラミング科
・プログラミング専科(夜)
○〈工業専門課程〉エレクトロニクス系
・電子通信科
・テレビ・ビデオ科
・航空電子科
・電気工事士科(1年昼・中卒以上)
・映像・音響科
・音響技術科
・映像・音響技術科(夜)
○〈芸術専門課程〉
・放送芸術科
・音響芸術科
・演劇・ミュージカル科
・マスコミ文芸科
・映画芸術科
・宣伝クリエイティブ科
○〈デザイン写真専門課程〉
・商業デザイン科
・インテリア・建築科(インテリアデザイン・建築)
・アニメーション科
・漫画科
・イラストレーション科
・写真科(商業・報道)
専攻科目の下に補足として「就職抜群の実績」「各種奨学生制度」「各種海外・国内研修制度」「学生寮(男女)完備」とある。
私が専攻した「音響芸術科」を例に挙げれば、実際に同科に入学してきた生徒の中で、専攻をまったく勘違いして入ってしまった者がいた。〈工業専門課程〉における「映像・音響科」や「音響技術科」と〈芸術専門課程〉における「音響芸術科」とは、似て非なるものである。ハンダ付けで機械いじりが好きなのに、入った途端、オタマジャクシを覚えさせられた――という笑い話だ。
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