入学したばかりの1年生だった頃は、この昼時の校内放送がとても珍しく思え、毎日聴き漏らさずに聴いていた。が、そのうち内容に厭きてきてしまい、単なる給食時のBGMとしか思えなくなっていった。
内容に厭きた最大の原因は、毎日同じ曲が流れた、ということだろう。学校とてレコード・ショップではないのだから、学校所有のごく限られたレコードが流されることになるのだが、さすがに毎日毎日、同じ童謡曲がリピートされると嫌気がさしてくる。しかもそれが6年間も続けば厭きるどころの話ではない。そういう点で我が母校の小学校では、校内放送にメスを入れるということがなく、この手のことに関してはほとんど進歩的ではなかった。
毎度、同じ童謡が流される――。そのうちの1曲が、左卜全とひまわりキティーズが奇天烈に熱唱する「老人と子供のポルカ」だった。
この曲のインパクトは相当たるもので、最初こそ聴いていて笑い転げていたものの、6年間リピートされ、すっかりこの曲の“超絶リピーター”となり果てた我々の耳には、ズビズバ~もヤメテケレもへったくれもなくなった。この曲を誰もがよく知っているにもかかわらず、笑顔で口ずさむ者は一人もいなかったのだ。
あの時代、つまり1970年代から80年代前半にかけて、全国の小学校の校内放送で「老人と子供のポルカ」が流れていた、ということらしい。
さて、小学6年の我が学級では、一回り小さな“事件”が起きた。恐怖の心霊写真ブームである。
霊体はどこに写っている?
全国から寄せられた不思議な
写真を 心霊科学の権威が、いま
鑑定・分析・解説するなかで
四次元世界の謎に敢然と挑戦する!》
この本の中の心霊写真で私が最も興味をひいたのは、テレビのブラウン管を写した写真に霊体が写っているという1枚。昭和48年にフジテレビの番組で招霊実験が行われた際のテレビ放送を写した写真だという。
ちなみに招霊実験とは、文字通り霊体を招き現世の人間に憑依させ、霊と言葉を交わす“口寄せ”を行うもので、恐山のイタコなどが有名である。
言うまでもない。これまで聴き慣れていた「老人と子供のポルカ」が、まったく違った意味の曲となってしまったのだ。教室は毎日“昼時”に震え上がった。
ところでこの本を教室に投げ込んだのは、一体誰であったのだろう。私はそれが、左卜全さんだとしか思えなかった。既に我々は、あの「老人と子供のポルカ」によって、彼の霊体を憑依していたことになる。
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