最近制作した実験曲「Sammy and Ella」の解説を書くため、中岡俊哉著『ふしぎ人間 エスパー入門』を文献とした。「Sammy and Ella」の曲想はウィジャボードによる“自動書記”(オートマティック・ライティング)がモチーフとなっており、ウィジャボードについては『ふしぎ人間 エスパー入門』の中で紹介されているトレーニング法を参考とした。
【『ふしぎ人間 エスパー入門』】 |
『ふしぎ人間 エスパー入門』は、当ブログ内で何度も紹介している書籍群、かつて一世を風靡した“小学館入門百科シリーズ”本の一つである。
この本の著者は、心霊研究家として有名な、中岡俊哉氏である。この本の中では“超能力研究家”という肩書きのみになっている。昭和50年代頃では、テレビのワイドショー番組などに多く出演し、心霊現象や心霊写真の解説をされていた方で、エスパーすなわち超能力に関しても著名な人であった(「左卜全と心霊写真」参照)。
小学館の入門百科シリーズとして発刊された本のリストをよく見渡してみると、当時の子供らが興味を惹いたスポーツ、趣味や娯楽、自然科学などに分類されるかと思われるが、文学と音楽のたぐいが何故か欠落していることにも気づく。それほど、当時の子供らには、文学と音楽は興味を惹かない、人気のないものであったのだろうか。そのあたりの事情はよく分からないが、昭和50年代までに発刊されたテーマには、文学と音楽のたぐいはまったくと言っていいほど見当たらない。
それはそうと、特に自然科学に類するテーマの場合、さらなる関心を惹き付けるため(発行部数を増やすため)、《謎》や《恐怖》を煽るようなビジュアルとテクストで編集されていた。『世界ミステリーゾーン』と『ふしぎ人間 エスパー入門』はその最たるものとして、物理の超自然現象にスポットを当て、まさに不思議な世界を演出していたとみていいだろう。それらは科学を見立てた非科学の世界であり、その境界線を完全に暈かすことによって、そういった独特の世界を作り出していたのだ。
中岡俊哉という人は、それを見事に自作自演した才能の持ち主であった。
当時、小学生であった私はこの『ふしぎ人間 エスパー入門』を読んで、ただちに強い影響を受け、友達らとグループを結成し、超能力のトレーニングを実践しようということになった。しかもそのグループを、“超能力研究会”と命名したりした。
もちろん小学生のやることであるから、遊びの範疇であり、本当の意味でそれを研究しようと思っていたわけではない。月に何回か友達の家に集まって、超能力を鍛えるためのトレーニングごっこをした、に過ぎない。案の定、中途で飽きてしまい、“超能力研究会”は自然消滅した。
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おそらくそれほど子供らを熱狂させるパワーが、『ふしぎ人間 エスパー入門』にはあったのだと思うが、この本の中で記されているようなトレーニング方法、つまり自動書記(こっくりさんなど)や、カメラを持参して心霊写真を撮りに出掛けたりといった行動を、真剣に積極的にやり出した人達の中には、それを信じ切る傍ら、超能力や心霊は「怖いもの」という先入観がありすぎて、自ら不幸な成り行きをこしらえてしまった人達が多いことを見聞きしたりする。
怖がっているうちはいいが、ある一線を越えてのめり込んでしまうと、何かしら破綻が生じる。そういう意味で、中岡氏の影響というものを考えると、かつての心霊ブームから生じた功罪はあるのではないかと思われる。
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