※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年11月01日付「スティーブンからの連関」より)。
“遅読”もここに極まれり――。ジョイスの『若い藝術家の肖像』。第五章のところでふらふらと文章を行ったり来たり読み返し、これは聖書が必要だなと気づき、聖書(新改訳・小型本)を買い求めつつ、エルヴィス・コステロのCDを聴いたりし、そうしたアイルランドの空気感を悦楽すべく寄り道を何度もするので一向に読み終わらないといった状況。この間にも丸谷才一先生の文化勲章受章のニュース。86歳の先生の笑顔は恵比須様のようでまったく励みになります。
さて、めくるめく連関。
まずは“スティーブン“繋がり。
今年の春、松平健さん主演の舞台『アンタッチャブル』に出演していた俳優・齋藤桐人さんは、私の母校(千代田学園)の一つ先輩(俳優・伊東孝明さんと同期)で、同じ芸術専門課程卒業の後輩としてファンなのですが、彼が在籍中に出演した舞台ミュージカル『金髪のジェニー』(1992年・シアターアプル)のスティーブン・フォスターもアイルランドの血を受け継いでいます。
いソノてルヲ先生の解説によれば、初期のミンストレル・ショー(Minstrel Show)の曲はスコットランドやアイルランドのメロディーが多かったそうです。ミンストレル・ショーなのに何故?と思うわけですが、『ジム・クロウ』という作品から黒人音楽を取り入れ始めたらしいのです。『金髪のジェニー』の中でジム・クロウを演じたのが、齋藤桐人さん。
母校恒例だったいわゆる卒業記念公演としてのミュージカルで、スティーブン・フォスターの音楽をやるという当時の母校のセンスは素晴らしいもので、私の中ではかなり濃厚な思い出となっているのですが、やはりそれが(今更ながらではあるけれども)個人的な触媒としてジョイスの文学に繋がっていくというのは、ごくごく自然な感じがします。
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