アイルランド

文学

寺山修司―三分三十秒の賭博とアスファルト・ジャングル

【寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』角川文庫】 今年に入って、寺山修司の文筆と映像の世界にどっぷりと浸かり始めた。この世界の、至る所から漂う臭気とは、いったい何か――。それは決して花の香りでも、柑橘系の香りでも、ない。乾いた土に雨が降り始...
写真・カメラ

ぐだぐだと、寺山修司と新宿風月堂の話

【福島菊次郎の写真集より60年代の新宿風月堂】 新宿…シンジュク…Shinjuku――と、かの時代の新宿に思いを馳せてみる。1960年代から70年代にかけての新宿。その頃私はまだ生まれていなかったから、1980年代以前の新宿の空気を知らない...
文学

司馬遼太郎の『ニューヨーク散歩』

【司馬遼太郎の街道をゆく39「ニューヨーク散歩」】 昨年中より、ざわざわと司馬遼太郎の本を読み返すようになった。圧倒的な熱量で彼の著書の歴史関連を漁り、幕末から明治維新以後の、近代の日本を読み解くのに夢中になっていた、私の20代半ばから後半...
映画

香り高き映画『バリー・リンドン』

【キューブリックの映画『バリー・リンドン』】 貴方は明日絶命します。もし最後に観たい映画があるとしたら、今夜何を観ますか? こんなことを訊かれて、真面目に答えるとするならば、私は『バリー・リンドン』と即答するだろう。スタンリー・キューブリッ...
文学

柳瀬尚紀のユリシーズ

【柳瀬尚紀訳ジョイス著『ユリシーズ 1-12』】 今年の2月、新聞の文化面の書評記事で作家の円城塔氏がこんな書き出しをしていて思わず目に留まった。《まだまだ小さかった頃、同じ本に複数の翻訳版があることに戸惑いを覚えた記憶がある。言葉を正確に...
飲み物

ラフロイグのスコッチ

【ラフロイグの10年物】 とある英字新聞で、“like a dog with a bone”という慣用句を知った。根気強い、粘り強い、という意。その新聞では、ある映画を紹介していて、“like a dog with a bone”はその映画...
書籍

『洋酒天国』と画家の話

作家の司馬遼太郎さんがアイルランドの紀行で、珍しく自身の酒にまつわる言葉を残している。《私はとくに酒がすきというわけではない。ただ旅先では、一日がおわると、一日の経験を酒に溶かしこんで飲んでおかねば、後日、わすれるような気がしてならない》(...
文学

再び『愛蘭土紀行』

幼少の頃よく聴いていたクラシック・レコードのジャケットやら解説のたぐいの写真などで、ロンドンを行進する軍楽隊の、その赤色と黒色の調和の取れた服装であるとか、別の写真におけるパリかどこかの街の、とある市民がフランスパンをハトロンの紙袋に包んで...
文学

漱石のこと〈三〉

「首縊りの力学」の話題に引き込まれて、先月から『吾輩は猫である』を読み耽っていると、年を明けた朝日新聞の記事に漱石の話題が掲載された。  《我が輩の寄稿である 漱石全集未収録 伊藤博文暗殺に「強い刺激」》(2013年1月7日付朝日新聞朝刊)...
文学

漱石のこと〈二〉

私が高校時代に新潮文庫の『こころ』(原題『こゝろ』)を買い、その後、ますます漱石文学に夢中になり、同じく新潮文庫の『文鳥・夢十夜』だの『門』だのを読み始めた経緯には、やはり底辺に《明治》に対する漠然とした関心が強くあったからだろう。特にその...