鎌倉

映画

遅ればせながら『早春物語』

【映画『早春物語』の当時のパンフレットより】 小学校時代の幼馴染みで、女優・原田知世さんのデビュー当時から彼女の大ファンだった男友達のHは、私と同じ工業高校まで腐れ縁であった。その日々を懐かしく想う。 20代の後半期に差し掛かった頃、別の友...
文学

漱石『こころ』の身体性について

【夏目漱石『こころ』】 夏目漱石の小説を読み終えると、いつも雑駁とした気持ちに駆られる。様々な思念が頭をよぎりすぎて、判別しがたい感情の複雑な振幅にしばしの眩暈を覚える。 最初の眩暈こそ、高校時代に読んだ漱石の『こゝろ』(以下『こころ』)で...
美術

秘密を覚える年頃

【箱根で買った秘密箱】 ついこの前、Amazonで箱根名産の寄木細工を偶然閲覧していて、あるテクストに気づいた。〈21回仕掛けのひみつ箱ですが、さらに1回の隠し部屋があります〉。 あれは確か私が小学生の時、箱根への修学旅行の土産に自ら買った...
文学

創作短編「蜻蛉」

道子と康彦が、鎌倉の鶴岡八幡宮へ訪れたのは、この日で2度目であった。尤も夏の暑い日に訪れるのはこれが初めてで、彼らにとって夏の鎌倉は、真新しい澄んだ色彩の連続であり、心身の休息には相応しいと思われた。 康彦は、道子の手をしっかりと握りしめ、...