冬ぼたんと木下杢太郎

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年2月7日付「冬ぼたんと木下杢太郎」より)。
 
 
 先週の上野では、東照宮のぼたん苑にて「冬ぼたん」を鑑賞しました。
 本来、牡丹は春咲きですが、1月から2月の冬咲きの寒牡丹は非常に咲かせるのが難しいそうです。私は今回初めてぼたん苑の寒牡丹を観ることができました。花はいくつか品種があるけれども、どれもしおらしいという感じがして、寒い季節に咲く花の一途な姿を見たような気がします。
 
 木下杢太郎が戦中の灯火管制中に描いた植物の画集――『新編 百花譜百選』(前川誠郎編・岩波文庫)というのがあります。昭和18年5月8日に描いた「牡丹」は、花片と葉をそれぞれ淡紅色と緑色の濃淡で描いていて独特の生々しさがあります。写真として写す「花」と違い、筆によって描かれるそれは、写実的でありながら、妙な女性的色気が漂い、ある種のフェチシズムの片鱗を思わせます。
 
 詳しいことはわかりませんが、本の図譜一覧によれば、この「牡丹」は木下杢太郎が“大学”で描いた画のようです。昭和18年頃ということを考えると、“東京帝国大学医学部教授”の頃ということになり、“大学”とは東大のことでしょうか。だとすれば、私が観た牡丹とあながち別個ではないということになるかも知れません。
 

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