【『洋酒天国』第43号は拳銃特集】 |
ネット・ブログで“ヨーテン”に詳しいのは、拙著[Utaro Notes]だけ。といっても過言ではない。これまで『洋酒天国』の中身を3年にわたって不定期で、40冊以上紹介してきた(ブログの“洋酒天国”カテゴリー・ラベルをご参照下さい)のだから。今年3月の「ごきげんよう『洋酒天国』」で一度は締めたものの、気持ち的に再び沸き立って第11号、51号と復活投稿。今回は勢いつけて第43号を紹介したい。まあ、よくぞここまで継続できたなと思う。実際に自分で本を手に取って、皮膚感覚で一つ一つページを舐め回しているから、他の古書店などのデータよりよっぽど詳しく書いてきたつもりである。
それでもしかし、ここまでくると、本の入手はかなり難しくなってきた。巷でよく出回っているのは、私が入手済みの号、ばかりだ。いくら定期的に各古書店を逐一検索しても、ここ最近はすっかり、未入手の号が見当たらない。今後新たに未入手号を買い求めることは、その稀覯本故にいよいよ困難な状況になってきた。特に、創刊間もない初期の1ケタ代の号を入手することは、もはや不可能に近いのではないかとも思われる。
が、こうなった以上、何が何でもすべての号を入手してやろう、実際に手に取ってやろうという意気込みである。古書店に頼らずとも、独自の情報発信によって、未入手の号を掻き集めたい(一時借りるという手段を講じてでも)。稀覯号の入手は、私にとって悲願の道程ということになってきたわけだ――。(※もし『洋酒天国』小冊子をお持ちの方で、お譲りいただける方がございましたら、こちら。)
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【ヨーテン・ミステリー、都筑道夫著「みいらとり」】 |
まえおきはこれくらいにして、壽屋PR誌『洋酒天国』(洋酒天国社)第43号。昭和35年2月発行。ちなみに前号の第42号は、前年12月発行で表紙はフランキー堺さん。実は前号が言わば女性による女性のための“ヨーテン”だったのに対し、今号の43号はその反対。男性による男性のための“ヨーテン”といった内容。それもかなりマニアックなテーマで、何を隠そう拳銃特集なのである。
壽屋がその頃スポンサーだったテレビ映画『ローハイド』(Rawhide)は、人気を博した西部劇(アメリカのテレビ映画シリーズ)だ。恐らくその縁故というかスポンサー的配慮を汲んでの拳銃特集だったのだろう。『ローハイド』の主演はエリック・フレミングと若き日のクリント・イーストウッドというから驚き。イーストウッドの出世作。
私は後々の『ローハイド』の再放送においても、今まで観たことが一度もない。ドラマの主題歌の「ローハイドのテーマ」は、昔、テレビのあちこちで流用されていた感じで、子供の頃何度も聴いたことがある。いずれにしても日本人の男性の多くは、西部劇的雰囲気(決闘だとか馬に乗って走るとか酒場で大暴れするとか)が、見世物として大好きであろうと思われる。
43号の中身は、そういったことで拳銃の写真やらイラストやらが所狭しと張り巡らされている。仮に拳銃が好きでなくとも、思わず感心して見入ってしまうほど、拳銃情報に詳しい。ちなみに冒頭のエッセイもやはり、拳銃がテーマ。大森貝介氏の「西部の拳銃」であったりする。だけれど個人的に好きなのは、都筑道夫氏のショート・ショート「みいらとり」。拳銃スミス&ウェッソンが出てくる。
拳銃というのはルガーだとかコルトだとか、ワルサーP38というのは「ルパン三世」で有名なドイツの軍用拳銃だが、思い出せば昔は、おもちゃ屋さんでピストルのプラモデルが、けっこうな品数を揃えて売られていたものだ。ピストル、戦車、軍艦、戦闘機モノといったところが、男の子の好きな定番プラモデル。その後、昭和50年代半ばくらいからであろうか、人気プラモデルの潮流が一気に変わった。機動戦士ガンダムである。ガンダムの登場によって、おもちゃ屋さんのプラモデル棚の装いは劇的に変化し、かつて軍用モノが陳列していた棚はすっかりのけられて、目立つところにガンダム・キャラクターがずらりと置かれるようになったのだ。店先に貼られた紙には、“ガンプラ入荷しました!”の文字。あの頃子どもたちはみんな、ガンプラを買ってきて服を汚しながら塗装していたのを思い出す。
そうして人気アイテムは時代によって推移したものの、男の子あるいは大人の男性が好きそうな世界というのは、依然として今でも、戦う武器やマシンといったもの――なのではないか。
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【私の選んだサケ②寺本圭一さん】 |
さて、拳銃の話はさておき――といかぬのが43号。何故って本当に、43号はほとんど拳銃絡みの話なのだから。「私の選んだサケ」のグラビアは、ウエスタン歌手の寺本圭一さん。ここでも拳銃。
寺本さんは慶應義塾及び青山学院出身の、日劇ウエスタンカーニバルのスター。ウエスタン・ハットを取ったら、映画俳優の市川雷蔵さんとまったくの瓜二つで、どちらが寺本さんなのか分からなくなるから面白い。後々彼が作詞を手掛ける「暗い砂浜」。これがまたいい。
【R・エンジェルさん】 |
この曲を歌うグループサウンズ、“ヴィレッジ・シンガーズ”は要注意だ。もちろんいい意味で。このあたりのグループサウンズやカントリー&ウエスタンはとてもいい感じ。個人的にあとで“ヴィレッジ・シンガーズ”については特集してみたいとも思う。ともあれ、今も現役バリバリのシンガー・寺本圭一さんだが、この“ヨーテン”の写真では、格好良くハットをキメて、ちょっと俯き加減で、左手のグラスの中身は、西部劇でよく見るウイスキーではない、白ワインだそうだ。寺本さんは神奈川県藤沢のカフェ&バー「ステージコーチ」で、活躍なされている。
おっと最後に一つ、これはようやく拳銃絡みではない、とっておきの写真。R・エンジェルさんの酒樽寝そべりヌード。こちらの琥珀色はどう考えてもウイスキーだ。ウイスキーの入ったグラス。中身は当然、はい皆さんご存じの、トリス・ウイスキー。そう、トリスです。間違いない。サントリー御用達である。
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