ちくま

写真・カメラ

『洋酒天国』とチラリパチリの話

【『洋酒天国』第15号。表紙は山崎隆夫作】  ブルターニュ古諺《パンと酒(ヴァン)なくてなんのおのれが恋かな》で始まる『洋酒天国』(洋酒天国社)第15号は、昭和32年7月発行。酒の瓶をモチーフにした表紙のイラストは、サン・アドの元社長、山崎...
ゲーム

『洋酒天国』とメフィストフェレス

【『洋酒天国』第34号。イラストは柳原良平氏】  こんなことがあっていいのか、昨夜これを書くために無数の『洋酒天国』を散らかして読んでいたら、“アンクルトリス”の柳原良平氏が亡くなった、という一報を知った。17日、呼吸不全。84歳――。突然...
美術

檸檬とカルピスの包み紙

【梶井基次郎『檸檬』(角川文庫)】  筑摩書房の高校国語教科書『新現代文』で梶井基次郎の「檸檬」を読んだ。  この教科書は私が高校時代に使ったものではない。まだ10年前の新しい教科書だ。したがって「檸檬」のあちらこちらには、この教科書の以前...
写真・カメラ

檸檬と丸善

【筑摩書房の高校国語教科書『新現代文』】  京都がすっかり遠くなった。  私自身、2011年以降の音楽制作がかなり熱を帯びたものになってから、それ以前の〈気が向いたら京都へ〉という自然の思考回路がOFFになってしまっているのである。そんな中...
スポーツ

漱石『こころ』の身体性について

【夏目漱石『こころ』】  夏目漱石の小説を読み終えると、いつも雑駁とした気持ちに駆られる。様々な思念が頭をよぎりすぎて、判別しがたい感情の複雑な振幅にしばしの眩暈を覚える。  最初の眩暈こそ、高校時代に読んだ漱石の『こゝろ』(以下『こころ』...
演劇

『洋酒天国』とニューヨークのバレエ団

【『洋酒天国』第23-24号】 《夕飯の前には一杯のシェリイを、夕飯の後ではポートワインを、夜の十一時にはウィスキーを飲む練習をしたまえ。もし君が水ばかり飲んでいたら、いつまでたっても彼等から敬意を払われないだろう。 アンドレ・モーロワ イ...
学校

教科書の中の高村光太郎

音楽における創作活動のうち、【作詞】という分業は、私にとって切実な命題となっている。  あるリズムを伴ったメロディに、言語を織り込んでゆく作業。言語の一片一片の音の形(音韻)、語彙、意味からくるイメージの世界であり、人間の意思や意志、行動、...
文学

漱石と読書感想文

一纏めに、私が学生時代(小学校から専門学校まで)に書いた、学校提出作文としての読書感想文について記憶をたどってみた。  小学校での、夏休みの宿題として提出を要求される読書感想文にはそれなりに風情があった。――夏休みの期間中、学校指定の本(文...
スポーツ

ウズミビ

【ウとワイの漢字】  中学音楽の教科書に出てきた雅楽「越天楽」に関連して、その雅楽なるものを少しばかり調べているうち、たけかんむりに“于”と書いてウと読む漢字に出くわし、不明だったので、『岩波 新漢語辞典』(第三版・岩波書店)を開いた。 《...
書籍

『茶の本』を手にして

もし自分に、「あらゆる書物を捨て、旅に出でよ」と天命が下るとするならば、私は躊躇せず着の身着のままの旅を始めるに違いない。しかし唯一、その天命に抗えることができるならば、私は一冊の本、岡倉天心の『茶の本』を片手に旅を続けることを乞うだろう―...