ちくま

文学

開高健『開口閉口』―やらされることの美学〈1〉

【清らかな自然に囲まれた山荘より】  ――こんな夢を見た。 人権擁護の活動家である私は、都会の喧騒を離れて、山荘にこもった。 夜な夜な、名前のよく知らない銘柄のスコッチを一杯飲む。すると、じんわりとした温かさが体を包み込んで、疲労感が一気に...
性教育

かつてジャニーズはメディアの寵児だった〈3〉

【斎藤美奈子氏の「『ジャニーズ問題』が暴き出したもの」】  前回からの続き。  日本古来より蔓延っている性的指向の一つとして、「少年愛」というのがある。「少年愛」とは、年上の男性もしくは女性が、年下の若年の男子に愛情を抱く性癖である。これと...
写真・カメラ

村上春樹とシューマンのこと

【村上春樹著「謝肉祭(Carnaval)」】 そこには、ヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフ(David Fiodorovich Oistrakh)の重い表情の写真が載っていた。私は彼のその“眉間に皺を寄せた”重い表情から、目を離すこ...
演劇

『洋酒天国』―ジャズと日劇〈2〉

【在りし日の日劇の姿。『洋酒天国』第58号より】  壽屋(現サントリーホールディングス)PR誌『洋酒天国』(洋酒天国社)第58号は、昭和38年7月発行。熱っぽくルイ・アームストロングのジャズの話で盛り上がった前回からの続き。今回は日劇――。...
写真・カメラ

『洋酒天国』―美しい食と酒の世界

【壽屋のPR誌『洋酒天国』第54号】  いつだったか知り合いからいただいた、オードブルならぬ「つきだし」のお裾分け――ちくわの穴っぽこに柴漬けの茄子を詰めた――はたいへん美味かった。当然、酒の肴にしたかったのだけれど、あいにく酒を飲む場では...
美術

『洋酒天国』の裸婦とおとぼけ回想記

【『洋酒天国』第3号。表紙はおなじみ柳原良平】  壽屋(現サントリーホールディングス)PR誌『洋酒天国』(洋酒天国社)第3号は、昭和31年6月発行。編集発行人はご存じもご存じ、作家の開高健。かの人は、謎めいた笑みを浮かべながら、あの世からで...
音楽

ジョセフィン・ベーカーではなかった愛の歌

【片山杜秀著「『聞かせてよ愛の言葉を』」】  今年の夏、とある随筆を読んでいて、見落としがたい重要な文章を発見した。専門家や知識人であればそれは、とっくの昔の既成事実に過ぎないのだけれど、私は今頃になってその事実確認と修正のたぐいを余儀なく...
写真・カメラ

三代目「二才の醸」の味わい

【青木酒造から蔵出しされた三代目「二才の醸」】  ここぞとばかりに日本酒を味わう――。20代の若者だけで造ったという珍しい酒がある。人肌恋しくなる甘さのベースが口に広がると共に、若々しい果実の、その鮮麗とした味と香りが、口腔から喉の底へと落...
写真・カメラ

高校で学んだ「清光館哀史」

【高校の国語教科書から柳田国男「清光館哀史」】  高校の国語教科書にあった柳田国男の随筆「清光館哀史」を初めて読んでから、28年の歳月が流れた。この時の国語教科書についても、また「清光館哀史」の――国語の先生の何故か異常なくらいに熱心で執拗...
写真・カメラ

梅と鮑照と漢詩のこと

【コラム「いきもの徒然草」より】  昨年亡くなった父が生前、ほっぽらざるを得なかったことの一つに、畑仕事がある。畑と言っても家庭菜園のために農家から借りていた畑で、今月になってようやく、土に埋まったままになっていたダイコンやらネギやらを農家...