京都

ミュージアム

天正遣欧少年使節―伊東マンショ

【東京国立博物館『伊東マンショの肖像』】  己の中でそっとしておけなくなった思い、煩悶、悲しみ。拙くともそれらを言葉にし、じっと受け止めて対話してくれる誰かが今、いて欲しい――。20代の頃、そうしてふらふらと立ち寄った上野の博物館の薄暗い展...
コンピューター

レイ・ハラカミと作る音楽の思考

【レイ・ハラカミ氏とその制作システム】  コンピューターでプログラミングした音、音響、音楽。放たれたそれぞれの音が無機質に響き合い、ポリ・リズムの記憶となり、旋律となって、いわゆる音楽として味わう身体の《冷たい》感覚。若い世代には何のためら...
スポーツ

安井誠一郎像と校歌

【東京文化会館の安井誠一郎像】  上野の恩賜公園を訪れれば、東京文化会館のロビーで休憩がてら、おもむろにコンサートのフライヤー群を漁るというのが、その都度の自分の音楽的昂揚度を測るバロメーターになってしまっている。要するに其所は自分にとって...
ミュージアム

漱石山房の香り

ちょうど2年前に漱石の『三四郎』を再読して以来、私の部屋は微かにヘリオトロープ(heliotrope)の香りを漂わせている。私の個人的な香りの好みは別として、ヘリオトロープが『三四郎』の小説の中に登場する。  ――三四郎は野々宮さんの家を訪...
写真・カメラ

檸檬と丸善

【筑摩書房の高校国語教科書『新現代文』】  京都がすっかり遠くなった。  私自身、2011年以降の音楽制作がかなり熱を帯びたものになってから、それ以前の〈気が向いたら京都へ〉という自然の思考回路がOFFになってしまっているのである。そんな中...
写真・カメラ

レンズへの惑溺

【ソ連製レンズJupiter-8の不思議な蒼さ】  1960年代のソ連製レンズ、Jupiter-8(50mm/F2)はなんだか玉が蒼い。この蒼さの魅力に取り憑かれて、まるで女性が香水や宝石に夢中になるように、私はこのレンズを光に透かして眺め...
ミュージアム

上野公園散歩の夢うつつ

【新緑の上野公園・さくら通り】  私は創作活動である作詞と作曲の構想を練るために、意識的に散歩をしたりする。歩くことで脳が活発になり五感が刺激され、それが作詞と作曲のためのエレメントとなることがある。私にとって東京・上野公園は、そのための最...
写真・カメラ

『洋酒天国』とまむし酒の話

【『洋酒天国』第31号】  師走に近づいた。周辺では比較的穏やかな日和が続いて、寒さはそれほどでもない。冬の本番はこれからのようである。  壽屋PR誌『洋酒天国』の第31号(洋酒天国社・昭和33年11月発行)。第31号はこの年の最後の号であ...
テレビ

『洋酒天国』とショート・ショート

【『洋酒天国』第39号】  小雨のぱらつく夜更け、酒を呑みながら小冊子『洋酒天国』(洋酒天国社)を読み耽る。今宵は、昭和34年9月発行の第39号を手に取った。  昭和34年にヒットした歌謡曲と言えば、ペギー葉山さんの「南国土佐を後にして」。...
美術

バルテュス展―無垢なる目撃

日頃、《音楽を演奏する》という一括りのありきたりな言葉に囚われすぎると、その本質を見失うことがある。  そもそも《音楽》を《演奏する》とは何であろうか。  ある空間における時間軸に沿った出音の集合体――その密と疎の波動が三次元で人間の聴覚に...