東京国立博物館

ミュージアム

私はデュシャンの「泉」を観た

【東博の平成館に向かう通路にて】  先月23日――。JR上野駅の公園口を出ると、空はまったくの濃灰色に染まっていた。まもなくぽつぽつと雨が降り始め、私は足早に公園内を通り抜けた。そそくさとライカのカメラをバッグにしまい込みながら――。  向...
飲み物

お茶とサブ・カルチャーのアーティクル〈三〉

いま私は中国茶の「武夷肉桂」(ぶいにっけい)を専門店から取り寄せて、そのふくよかなお茶のひとときを、束の間の休息を愉しもうとしている。岡倉天心と私淑するmas氏の話をすれば、おのずとそれはお茶の話になるという筋道が、昨年の前回の〈二〉まで。...
ミュージアム

アラビアの道―東博・表慶館にて

【上野の東博・表慶館】  春の兆しを体感した2月末の穏やかな日、東京・台東区の東京国立博物館(通称・東博)におもむく。目的は、『アラビアの道―サウジアラビア王国の至宝』の観覧。東博の表慶館という趣のある場所で、人類の歴史と文明を遡り、アラビ...
ミュージアム

銅鐸と勾玉―東京国立博物館

【東京国立博物館・平成館の考古展示室】  去る4月4日。すっかり青空が広がり、上野の恩賜公園の桜の花がほぼ満開に咲き乱れたその日、私はなんとも久しぶりに東京国立博物館(略して東博)を訪れた。確か昨年訪れたのは8月の特別展『古代ギリシャ―時空...
ミュージアム

天正遣欧少年使節―伊東マンショ

【東京国立博物館『伊東マンショの肖像』】  己の中でそっとしておけなくなった思い、煩悶、悲しみ。拙くともそれらを言葉にし、じっと受け止めて対話してくれる誰かが今、いて欲しい――。20代の頃、そうしてふらふらと立ち寄った上野の博物館の薄暗い展...
ミュージアム

黒田清輝―赤き衣を着たる女

【東博『黒田清輝―日本近代絵画の巨匠』】  先月の19日、上野・東京国立博物館にて『生誕150年 黒田清輝―日本近代絵画の巨匠』を観た。  良く晴れた午前。新緑に満ちた公園を抜けて東博の敷地に入り、ユリノキを見上げたその足で平成館に向かうと...
ミュージアム

見返り美人のこと

【左2枚が「見返り美人」。右2枚は歌川広重「月に雁」】  日本美術史において美人画の最高傑作というものが何であるか、私は知らない。考えたこともなかった。ただし近頃何故か、美人画と称される絵画に出くわす機会が多い。無論、最高傑作などという商業...
文学

冬牡丹への懸想

【水舎門をくぐれば東照宮。そしてぼたん苑】  真新しい新潮文庫で漱石の『行人』を読んだのは、“昨年”のこと――と思い込んでいて直ちにツイッターで確認したところ、それは間違いで一昨年の秋であったことに気づいた。    時間経過の感覚が歳をとる...
ミュージアム

兵馬俑に出会う

【東博にて。『始皇帝と大兵馬俑』】  1月7日、“博物館に初もうで”に行った。私はほぼ毎年のように東京・上野公園の東京国立博物館を訪れる。  正月の特別公開である葛飾北斎の富嶽三十六景(凱風快晴、山下白雨、神奈川沖浪裏)と狩野山雪の猿猴図は...
ミュージアム

上野公園散歩の夢うつつ

【新緑の上野公園・さくら通り】  私は創作活動である作詞と作曲の構想を練るために、意識的に散歩をしたりする。歩くことで脳が活発になり五感が刺激され、それが作詞と作曲のためのエレメントとなることがある。私にとって東京・上野公園は、そのための最...