※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年1月20日付「おもちゃの王様『電子ブロック』」より)。
【高嶺の花だった電子ブロックEX-150の復刻版】 |
我々の世代は、いわゆる“第二次ベビーブーム”の頃に生まれた世代で、小学校の放課後ともなると、校内はもちろん、町の至る所に子供らがいて、かなり頻繁に友達の家にお邪魔するという“子供サロン”の様相もありました。
子供の文化と秩序を支えていたのは学校以外に、おもちゃ屋がそうでした。町のおもちゃ屋さんは子供らにとって文化センターのようなものでした。例えばガチャガチャの10円ガムを買って口に頬張るだけで、あとはオモチャは買わずとも、その頃流行ったテレビゲーム(ATARI、SEGA、NINTENDO)に群がり、時間を忘れてゲームに耽ったものです。
我が町の駅前の各商店街には、80年代前半当時、おもちゃ屋は4軒あって、市街地周辺ではさらに多く点在していました。やはり黎明期のLSIゲームやテレビゲーム人気の影響で、子供らの来店は増加していたのでしょう。つまり、本来のおもちゃは幼児がターゲットであるけれども、LSIの登場と爆発的な普及によって小学生高学年以上の10代の学生らもおもちゃ屋に足を運んだ、言わば最初の時代、ということは考えられます。
さて、どこのおもちゃ屋でも、高価な(あるいは大人気の)おもちゃは、レジ付近のガラス張りのショーケースに並べられていたものです。それが欲しいときは直接手に触れることができないので、いちいち店員さんを呼び、ショーケースの鍵を開けてもらう、ということになりますが、その時点ではもはや心理的にそれを買わないわけにはいきません。
ショーケースの鍵を店員さんに開けてもらう=絶対に買う
という心理的法則。
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【美しきブロックたちの輝き】 |
――小学3年の終わり頃、埼玉の春日部から転校してきた少年と仲良しになって、小学4年ではすっかり打ち解け合い、よく彼の新居に遊びに行きました。名前をコウちゃんといいます。
彼の住み始めた新居は、言わば当時最新のモジュール住宅で、真っ白な壁がとても美しく印象的でした。まだ周囲に家々が並んでおらず、数百メートル離れた場所からも、彼の自室のある2階の窓がよく見えました。
コウちゃんの部屋にあった素晴らしきおもちゃは、学研の「電子ブロック」でした。
型番はEX-150で、ICアンプやメーター、光センサーなどが付いており、ほぼすべての電子回路実験ができる上位機種でした。〈これはおもちゃではない…大人のマシンだ〉とショックを受け、私がそれまで見てきたおもちゃの中で、最も高級で謎めいていて、しかもかっこよく、とてつもなく大きな羨望を覚えたと同時に、コウちゃん自体(あるいはコウちゃん一家)が宇宙人に思えたほどです。
それからまもなくしておもちゃ屋へ出掛けてみると、案の定、「電子ブロック」シリーズは、ガラス張りのショーケースの中にありました。
しかも、170センチ以上あるショーケースの最上段に…。絶対に手が届かない…。やっぱり大人のマシンなのだとは思いましたが、気になったのは、ショーケースの中の「電子ブロック」のパッケージにうっすらとホコリが。あんなに高い所に据えられ、誰にも買われずにずっと置きっぱなしになっているのだ、と思いました。
ああ、喉から手が出るほど欲しい。
確かEX-150はウン万円したはずです。私にとって高嶺の花でした。
それからだいぶ時期が経過して、お小遣いやお年玉を貯めた私は、ようやくショーケースの鍵を開けてもらうことができました。ただし、高価だったので、1ランク下の数千円値の下がるEX-120。EX-120はメーター部が取り付けられておらず、それを使用した実験ができません。それでも存分にこの「電子ブロック」を堪能することができました。
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