イラストの中の近未来

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年10月11日付「イラストの中の近未来」より)。

 “科学万博―つくば’85”というのは日本語による一般表記で、正式名称は“国際科学技術博覧会”。これは国際博覧会条約に基づく特別博覧会に当たります。昭和60年3月17日から9月16日までの184日間、茨城県筑波研究学園都市で開催。運営団体は国際科学技術博覧会協会で、テーマは「人間・居住・環境と科学技術」。
 というのを『公式ガイドブック』より引用。
【近未来のセキュリティシステム】
 当時私は中学1年生でしたが、自宅の古いアルバムやネガを調べてみたところ、やはり万博会場での写真類は一切出てこない。あるのはたった1枚、学校で訪れた際の、記念写真のみ(ブログ「EXPO’85回顧録・其の一」参照)。家族で一度だけ訪れたはずなのに、その時のスナップ写真はない。カメラを持参していなかったか、撮ったネガを処分してしまったか、万博に対する熱い思いとは裏腹に、自分がそこに居たことを証明する記録物はほとんど無いわけです。
【近未来の勉強部屋】
 当時、『公式ガイドブック』を事前に購入することができず、パビリオンの情報を得るために書店で買い求めたのが、『とびだせ!EXPO’85 SCiENCE LAND』(リイド社)。しかしこれを買ったのは大失敗で、パビリオンに関する情報は程々でもなく、サイエンスに関するイントロダクションのみの内容で、様々な実験付録が添付されていたにもかかわらず、私自身は不満、消化不良でした。
 唯一、ときめいたのは、近未来の家庭生活をイラスト化したページ。そのページで小さく紹介しているパビリオンは「UCCコーヒー館」と、関連性が非常に薄い、強引な結びでやや興ざめ気分を味わったのですが、要はINS(高度情報通信システム)の発達で、将来、家庭での自動化(ホーム・オートメーション)が進むという内容。
【近未来のホーム・ショッピング】
 「CAI」という言葉が出てきて、コンピュータを用いた教育が進むという話。それから、通信網を利用した家庭でのショッピング(ホーム・ショッピング)。テレビジョンも高品位になり、薄型壁掛けテレビを使用したホーム・シアター。家庭の中に防犯カメラやセンターを取り付け、通信網で警備会社と連携を図るホーム・セキュリティ・システム。
 素晴らしいことに2011年現在、すべて実現し、すべて実際的に稼働しています。
【近未来のホーム・シアター】
 イラストの妙味、というか、実際的なそれとは少しかけ離れた造作にも見えますが、そこが面白い。実際の現物の方がより高機能でデザインも美しく進歩的なのに、イラストの方がもっと新しい感覚に満ちている。むしろイラストの中の家庭はインテリアが近未来的でそこに惹かれるのかも知れません。
 しかし今や、家庭での自動化はほぼ完了して、個人が室外で通信網を利用する時代。ジョブズ氏が遺したiPhoneを思わせる端末(携帯電話ではない)は、26年前のあの本にはまったく記されておらず、もし予期して記されてあったとしても、読者はそれをどのように扱うのか、何の目的で使うのか、理解不能だったでしょう。

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