※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年11月7日付「ゴジラ映画と東宝」より)。
【1984年版『ゴジラ』のサントラカセット】 |
子供の頃、街の映画館で映画を観ていると、その上映中にもかかわらず、嗄れた女性のアナウンスで、
「おいしいコロッケパンが入りました。おいしいコロッケパン、いかがでしょうか。どうぞお召し上がりくださいませ」
と館内スピーカーから流れてきました。実はこの“コロッケパン”、街のとあるパン屋さんが焼いた本当においしい素朴なコロッケパンなのですが、いかに面白い映画の途中であろうとも、私は中座してコロッケパンを買いにロビーへ出ていった。その間の映画のシーンが記憶から欠落することになるので、欠落したシーンを観るためだけに、もう1回、同じ映画を観る、ということをよくやっていました。
1986年、ハリー・ウィナー監督の映画『スペースキャンプ』(出演:ケイト・キャプショー)で“ダイダロス”という重要な言葉が出てくる。敢えて何のことだか触れませんが、『若い藝術家の肖像』を読んでいて、何度か思い出しました。その前の1985年は中学1年生で、東宝の『ゴジラ』を観た。いわゆる1984年版(1984年12月15日封切)のことで、監督は橋本幸治氏。いずれにしても小学生から中学生にかけて、あの映画館で“コロッケパン”を囓りながらよく映画を観たわけです。
レコード・ショップでサントラのカセットテープを入手し、その日のうちに1度聴き、あまりに興奮したので友人に電話して来てもらい、その友人と一緒にもう1度聴いた…。友人は2時間弱も映像のない音響だけに付き合わされてひどく退屈していましたが、私は興奮冷め止みませんでした。
後に“音響芸術科”の学生になった私ですが、この1984年版の『ゴジラ』の音響を、当時中学生なりに勉強したりもしていました(それがラジオドラマ制作へと繋がっていった)。
【当時の東宝のMEスタジオ】 |
無論、音を付け加えていくダビングの作業に興味津々だったのです。しかし、音はともかくとして、この当時の東宝の録音・編集というのは、音楽のレコーディングとはまったく別物だったのでしょうか(下2カットの画像は小学館『東宝「ゴジラ」特撮全記録』より)。
巻き取られているリール幅は2インチほどで、得体の知れない磁気録音のためのテープ? フィルム?
【ダビングの機材とドルビー光学録音機】 |
人の身長以上もある縦に伸びたかなり大型のダビング用レコーダーが5機。いや、それ以上あったのかも知れません。ダビングチェックのスタジオではスチューダーあたりのテレコ(ドルビー付き)を使用しているのに、何故ダビング機はこれほど大型なのか。5つの音をダビングするのに部屋をすべて占領してしまう程です。
東宝は、古くはバリアブル・デンシティー方式の光学録音で、やがてバリアブル・エリア方式の光学録音を採用した…云々の次元の話ではなく、あの大きなダビング機がどこのメーカーでどんな性能なのか、それだけが知りたい、と中学1年生の私は思っていました。今も分かりません。 1954年の初代ゴジラの話はこちら。
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