ビッグ・フォアとロイ・ジェームス

【THE BIG FOUR『JAZZ AT THE TORYS』】
 壽屋のPR誌『洋酒天国』第18号の表紙(当ブログ「『洋酒天国』とパリの裏通り」参照)を飾った往年のタレント、ロイ・ジェームス氏の名司会ぶりが聴けるCDが、ビッグ・フォアのアルバム『JAZZ AT THE TORYS』である。その名から察する通り、スポンサーは壽屋(サントリーの前身)で、1957年に東京ヴィデオ・ホールにて公開収録されたラジオ番組だ。
 私はこのアルバムを三日三晩聴いた挙げ句、4日目もロイ・ジェームス氏のタイトルの掛け声で耳を躍らせた。無論、目当ては彼の名司会ぶりではなく、ビッグ・フォアの揺さぶられるような演奏である。
 ビッグ・フォアの面々を挙げておく。ドラムはジョージ川口、ベースは上田剛、ピアノは中村八大、テナー・サックスは松本英彦。
 もしかするとこのアルバムの白眉は、ジョージ川口氏のドラム・ソロがたっぷり聴ける「DRUM BOOGIE」だったりするのかも知れないが、私は上田氏のベース・ソロの「SOMEBODY LOVES ME」から「SUMMERTIME」、そして最後の「DRUM BOOGIE」という3曲の流れが好きで、よくこの流れを聴いたりする。ガーシュウィン弟の「SOMEBODY LOVES ME」は、個人的にシャーリー・ホーンのピアノとヴォーカルが好きなのだが、上田氏のそれも面白い。
 ジャズ・シンガー丸山清子氏が歌う「SUMMERTIME」は独特であると思った。入手できる彼女のCDとしては『トウキョウ・キャナリーズ』があるが、私はまだそれを聴いていない。エラ・フィッツジェラルドと似ていなくもないが、似ているとも思わない。やはり独特である。あの時代の、日本人が西洋音楽を背景としてジャズを吸収した表現――そのアウトプットのすべてが、丸山清子氏のヴォーカルによく表れていると思う。
 話の寄り道をする。1970年代のテレビのクイズ番組「霊感ヤマカン第六感」(司会はフランキー堺さん)にロイ・ジェームス氏が出演していたという私自身の記憶は、やはり思い出せない。「霊感ヤマカン第六感」のテーマ曲を作曲したのは山下毅雄氏で、彼が作曲した「レッドマン」という歌が私は好きだった。「霊感ヤマカン第六感」のクイズの中で、コンガのフレーズが多用されていてこちらはよく憶えている。それにしても、音楽的な刺激の多い番組であった。
 山下氏も作曲のルーツはジャズであり、アメリカのジャズと日本のジャズ界で培養されたジャズ、この双方の融合された音感というべきものが、彼の生み出した曲の中からじわりと味わえるのである。

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