こころ

映画

新藤兼人監督の映画『心』

【新藤兼人監督の映画『心』(アートシアター・パンフレットより)】 今にして思えば、私が幼少期を過ごした昭和の時代(昭和47年以降の1970年代)には、独特の空気が漂っていた。ここでいう空気とは、時代の雰囲気、あるいは気配といっていいのだけれ...
文学

夢十夜―慥かな、とてつもなく慥かな

“夢”(ゆめ)という語には、ロマンチックな趣の想像とは裏腹に、恐怖体験を俄に想起させる二重の意味が隠されている。 考えてみれば私自身、“夢”という語を創作上、それこそ何度も使い回ししているが、過去においてはっきり国語辞典でこの“夢”という語...
文学

芥川龍之介の『蜜柑』を読んで

【筑摩書房の芥川龍之介全集より『蜜柑』】 芥川龍之介という人の作品は、それこそ太宰治と同じくこぞって学生に読まれやすい性質がある。この知名度の大きさは、作家にとって、いや作家とその作品を十分に理解する上で、ある種の先入観に侵されやしないか。...
文学

檸檬と丸善

【筑摩書房の高校国語教科書『新現代文』】 京都がすっかり遠くなった。 私自身、2011年以降の音楽制作がかなり熱を帯びたものになってから、それ以前の〈気が向いたら京都へ〉という自然の思考回路がOFFになってしまっているのである。そんな中、丸...
文学

漱石『こころ』の身体性について

【夏目漱石『こころ』】 夏目漱石の小説を読み終えると、いつも雑駁とした気持ちに駆られる。様々な思念が頭をよぎりすぎて、判別しがたい感情の複雑な振幅にしばしの眩暈を覚える。 最初の眩暈こそ、高校時代に読んだ漱石の『こゝろ』(以下『こころ』)で...
文学

漱石と読書感想文

一纏めに、私が学生時代(小学校から専門学校まで)に書いた、学校提出作文としての読書感想文について記憶をたどってみた。  小学校での、夏休みの宿題として提出を要求される読書感想文にはそれなりに風情があった。――夏休みの期間中、学校指定の本(文...
文学

漱石のこと〈二〉

私が高校時代に新潮文庫の『こころ』(原題『こゝろ』)を買い、その後、ますます漱石文学に夢中になり、同じく新潮文庫の『文鳥・夢十夜』だの『門』だのを読み始めた経緯には、やはり底辺に《明治》に対する漠然とした関心が強くあったからだろう。特にその...
文学

漱石のこと〈一〉

※以下は、夏目漱石に関して拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2010年7月20日付「漱石と私」より)。  私が夏目漱石の文学に傾倒していったきっかけについて書いてみたいと思います。  既に、このブログの中で私が幼年時代に百...