ピアノ

音楽

村上春樹とシューマンのこと

【村上春樹著「謝肉祭(Carnaval)」】 そこには、ヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフ(David Fiodorovich Oistrakh)の重い表情の写真が載っていた。私は彼のその“眉間に皺を寄せた”重い表情から、目を離すこ...
音楽

90年代のフェティシズム―スピリチュアル・ヴァイブスとトリス

【竹村延和のソロ・アルバム『Child's View』】 今宵は、酒と音楽と恋の話で妄想したい――。こんなテーマが、野暮で冗長でありふれた戯言すぎることを私はよく知っている。それでも尚、このテーマから背くことができないような気がする。好きな...
映画

秘密を抱えた『櫻の園』

【映画『櫻の園』(1990年)のビデオ版パッケージ】 先日、新聞にて、「第41回全国高校総合文化祭」(みやぎ総文2017=総文祭)で催された高校演劇の総評なるものを読んだ。普段、商業演劇しか観ない人にとっては、学生演劇というのはとかく鬼門と...
音楽

「グリーン グリーン」とA先生のこと

【音楽の教科書の中の「グリーン グリーン」】 小学校時代の懐かしい教科書を眺めるのは、私の生活習慣のうちの一つの楽しみとなっている。かつて学校で何を学び、それにまつわる出来事の何を思い出すのか、忘れていた意外な記憶が甦ってくることもあって、...
文学

夢十夜―慥かな、とてつもなく慥かな

“夢”(ゆめ)という語には、ロマンチックな趣の想像とは裏腹に、恐怖体験を俄に想起させる二重の意味が隠されている。 考えてみれば私自身、“夢”という語を創作上、それこそ何度も使い回ししているが、過去においてはっきり国語辞典でこの“夢”という語...
音楽

板橋文夫のピアノ曲「渡良瀬」

北関東を流れる渡良瀬川についてまず触れておく。 《足尾山地の北西縁と南縁に沿って流れる利根川の支流。全長109キロメートル、流域面積約2,745平方キロメートル。水源は栃木・群馬両県境にある皇海山(2,144メートル)の東ろくにあり、足尾町...
写真・カメラ

現像しなかったフィルム

先日のショパンの話から連想して、こんなことを思い出した。  私はもう何年も、それこそ何十年もずっと、その机の小さな引き出しの中に、無造作に放り込まれた1本の「フィルム」が在ることを、知っている。 それは古いポケットカメラの110フィルムとい...
音楽

グールドと888フーガ

日々、これ失敗とその上書きの連続なり――。  ブログ上に書かれていたことが、間違いであったことに気づき、長い間ほったらかしにしていたその訂正作業を、先ほど済ませた。この一件に関しては恥ずかしながら、感慨深いものがある。 それは、当ブログ「フ...
文学

赤毛のアンと少女の話

今、私の手元にあるルーシー・M・モンゴメリ原作の日本語版『赤毛のアン』数冊のうち、古い中村佐喜子訳(角川文庫)のそれが、私が少年の頃に親しかった少女の“母親”が熱心に読んでいた訳本――であると推理した後、その他の訳本に目もくれず、私がこれに...
文学

理と思想について

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年9月22日付「理と思想について」より)。  昨日の午後――。楽曲「ママのそばで」のために鍵盤に向かうこと3時間。ある瞬間から、自分がどれだけ集中しているかも気づかぬほど...