壁に記された伝言

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2009年10月5日付「壁に記された伝言」より)。

 袋町小学校の「伝言」について、私が初めて知ったのは、何年か前に放映されたNHKのドキュメンタリー番組だったと思います。詳しくは、袋町小学校平和資料館のサイトをご覧になってみてください。
 私が資料館に訪れた先月の28日の午後は、雨がぱらついていて、気分的にもひどく落ち着かないものでした。資料館の入り口に踏み入れた時、受付の席には誰もいず、はて、ここは入館料があったっけ…としばしその場で留まっていましたが、靴を下駄箱に預けて廊下を進み、教室に入ったところで初めて、資料館のガイドの方(おじさん)に出合いました。
 ところで私は広島駅に着いた瞬間から、東京とは気温の差が激しく、雨空のもと、ものすごく蒸し暑さを感じていたのですが、そのガイドの方と被爆当時の話を聞いた小一時間、いわゆるその「西校舎」の窓から入ってくる心地よい風に、思わず私は何とも言えない感動を覚えました。
 雨空のもとの心地よい風と共に、新しい校舎の中から元気な子ども達の声が聞こえてくる。頭では昭和20年に思いを馳せているのに、身体の方は、どうしようもなく「いま」の感触と感覚に反応していました。
 爆心地に近いこの小学校で何がどうなったか。そして被爆後の救護所としての仮場の中で、人々が何を思ってそこに伝言を託したか。そうした未曾有の惨事の細部を、いま私が想像しうることは到底不可能です。
 あの時の古い校舎の一部が、保存されそこにあるということ。
 唯一、私に想像できるのは、ここにそれがある限り、それ自体が平和を希求する「伝言」となるだろうということです。
 おじさん、いろいろ教えていただき、ありがとうございました。

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