※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2011年8月23日付「いソノてルヲ先生の思い出」より)。
2011年7月、雑誌界の大御所であった『ぴあ』が休刊となった。その最終号には創刊号の復刻版という粋な計らいの付録があり、私はこちらの方に惹き付けられた。この“映画・演劇・音楽の総合ガイド誌”月刊『ぴあ』創刊号(8月号)は、1972年7月発売となっているから、すなわち私が生まれたおよそ1ヶ月後に発売されたということであり、随分昔のように感じられる。いずれにせよ雑誌『ぴあ』は、いくつかまとまった時代の日本を駆け抜けた、長きにわたる寵児であった。
そのぺらぺらな創刊号のページをめくっていって、ふと、“いソノてルヲ”先生の活字を発見した。
――思い出が蘇ってくる。毎週月曜の午前、5階にある教室で「アメリカン・ポップス」の講義授業が行われた。講師はいソノてルヲ先生で、太いフレームの眼鏡をしていた印象が今でも記憶に残っている。先生は毎週、自身のラジオ番組をカセットテープに録って持参し、それを聴講資料として流して、アメリカン・ポップスの歴史とジャズの素晴らしさを教えてくれた。
創刊号の中にあったのは、「白樺湖高原音楽祭」である。ここで司会をしておられたのが、いソノてルヲ先生だ。
◎白樺湖高原音楽祭
7月29日(土) 2時~9時
7月30日(日) 2時~9時
7月31日(月) 2時~9時
場所 長野県白樺湖池の平ホテル・レイクランド(小雨決行)
料金 1200円(前売) 1500円
■(出演者)
29日 宮間利之とニュー・ハード/佐藤充彦がらん堂/沖至四重奏団/稲垣次郎とソウル・メディア/高木元輝トリオ/ジョージ川口とビッグ4/南里文雄/松本英彦/川崎燎クインテット/サミー/後藤芳子
司会 いソノてルヲ/行田ヨシオ
30日 渡辺貞夫クインテット/日野皓正クインテット/菊地雅章クインテット/ジョージ大塚クインテット/鈴木宏昌トリオ/山下洋輔トリオ/笠井紀美子/後藤芳子
司会 いソノてルヲ/行田ヨシオ
31日 高田渡/なぎらけんいち/ガロ/シュリークス/小野和子/加橋かつみ/RCサクセション/石川晶とカウント・バッファロー/はっぴい・えんど/モップス/三上寛
司会 落合恵子
問合せ先
T・C・P
T・C・P
文化放送販促部
別のページのジャズ喫茶の欄には、自由が丘の「5スポット」が紹介されていた。5スポットはいソノてルヲ先生がオーナーの人気ジャズ喫茶だった。
■5スポット(自由が丘)
7月20日(木) チック・コリア
25日(火) 北村英治クインテット
29日(土) 森寿男とブルーコーツ
30日(日) 日野皓正セクステット
この他を除く毎夜
「ハウス・カルテット」
岸田恵二(d)
井野信吉(b)
渡辺香津美(g)ETC
時間 PM6・00~・・00
料金 200円より
*
先生のラジオが流れている間、贅沢にも教室はたちまちジャズ・スポットとなった。あいにく真っ昼間の上野で、校舎ビルの窓からは隣の下谷一丁目アパートが見えるだけである。しかしそれでも心地よい、ふくよかな気分になった。
その時の講義の中身は忘れてしまった。が、先生に教えられてマヘリア・ジャクソンのBOX CDを買った。先生は1999年に亡くなられたが、私は勝手にそのBOX CDを先生の形見だと思っている。先生の肉声だけは、今も何故か忘れていない。
「いソノてルヲ先生の思い出【補遺】」はこちら。
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