上野大仏の話

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2010年9月1日付「上野大仏の話」より)。

 昨日は国立科学博物館を参観した後、久しぶりに上野恩賜公園を散策しました。真夏の日差しが照りつける中を。

 ――学生時代、上野の公園は私にとって恰好の暇つぶしの場でした。

 午前の授業が終わり、昼休みを挟んで午後の授業は「14時から」などとなっている曜日は、紫煙を燻らせた校内の食堂で時間を潰すのも退屈するので、とぼとぼと駅の入谷口から改札を通って公園口に抜けるか、あるいはゆるりと浅草口のあたりを素通りして交差点を渡り、聚楽レストラン近くの石段から公園へ向かうルートで上がっていき、園内を1周して森林浴を楽しみ、余った時間は丸井の書店でさらに時間を潰す…などということをしていました。
 そんな時間を持て余していた時であっても、「上野大仏」へはまったく立ち寄らなかった――。
 学生時代、そんなものがあることを、なんとなく“噂”では聞いていた程度でした。…あまりにも不運としか言いようがない幾度の罹災により大仏は顔面のレリーフのみとなり安置されている…パゴダ様式の祈願塔がある…といったどこからかの“噂”が、いつの間にか私の頭の中でいい加減に組み合わさり、“パゴダの像…パゴダの像”とまったく見当違いな言葉が刻み込まれて、ずっとそれが記憶の中にありました。
 「上野大仏」は上野精養軒の程近いところにあります。
 個人的な好みですが、私は奈良の大仏のように整然とした顔立ちよりも、この上野の大仏(釈迦如来)の顔立ちの方が東洋然としていて好きです。おそらく大仏が全身で安置されていれば上野恩賜公園の名所となっていたと思うのですが、レリーフと祈願塔のみのせいか訪れる人も少なく、ここはいつもひっそりとしています。私が昨日訪れた際は、二人の外人観光客がカメラを片手にやってきていました。
 それでも尚、私の頭の中では、それは“パゴダの像”なのです。

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